一章 待ち女
朝の支度
彼は上半身を起こし、寝ぼけ眼をこすった後、ゆっくりと立ち上がった。その足で、部屋の木戸を開ける。
建物の東に設けられた木戸から顔を出し、空を見上げ、太陽の位置からおおよその時間を知る。
それから、二度寝防止のためにかけ布代わりの
彼は寝間着にしている薄衣を脱ぎ、
◆◇◆◇◆◇
「おはようございます、お二人とも!」
屋敷の厨までやってきた多留比は、すで朝餉(朝食のこと)の用意をしている使用人の老夫婦に、大きな声で朝のあいさつをした。
「ああ、おはようございます」
「おはようございます。多留比坊ちゃん、今日も早いですねぇ」
老夫婦は、朝から元気のよい少年の言葉に、やわらかな笑みで応える。
二人の年の頃は、
ちなみに、広い意味ではこの屋敷の使用人でもある多留比に、祖父母のような年の差がある老夫婦が敬語で話しかけているのにはちゃんとした理由があるのだが、それは後ほどくわしく語りたい。
「多留比坊ちゃん、もう少しで準備が終わりそうですよ」
「ああ。今日は、
「わかりました。
厨の外にある水がめの水で顔を洗っていた多留比は、
「ああ。よろしゅう頼みますぞ」
「行ってらっしゃいまし」
祖父母のような二人に見送られながら、多留比は屋敷で一番大きな部屋へ向かった。
この屋敷の主である、幼なじみの少女姫を起こすために。
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