真っ白な光の中へ

 薬局を出ても陽射しは相変わらず強かったけど、空には雲が出ていた。

 風も強くなっている。


「台風きてるのかなー」

「っぽいね」


「うちのお母さんさー、台風くるといっつも頭痛くなるんだよ」

 きよこは少し心配そうだった。


「そっかー。じゃあお見舞い……あ、ダメか」

「…………うん」


 わたしはきよこの背中にぎゅっとしがみついた。




 この手を少し上げたら、ブラがあるけど中身は空っぽだ。


 少し下げたら今までなかったものがあって、わたしの手の中で大きくなる。




 なんで?


 なんでなの、きよこ?




 この不安はいつまで続くの?

 もう二度と、元には戻らないの?

 わたしたちは前と同じようにやっていけるの?




 ――――きよこ、あなたは、


 どうしてそんなに平気でいられるの?


 どうしてそんなに強いままでいられるの?




「風が吹いたらちょっと涼しいね!」


 そういってあなたはサドルから腰を浮かせた。

 しなやかな脚がペダルを力強くぐ。


 きよこ、きよこ、きよこ。

 もっと、もっと、強く。

 もっと、もっと、前へ。


「アイスが溶ける前に帰ろう!」


 真っ白な光の中へ、わたしたちはどこまでも進んでいった。

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きよこブスリたみこ 桑昌実 @kwamasame

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