3話 野鳥 20200922
野鳥の魅力に
YS川沿いにウォーキングしている時でした。川面に突き出た枝先に青い鳥がとまっていたのです。
それは写真などで見覚えがあったカワセミ。
実物のあまりの美しさに目を奪われていると、突然ヒュッと川面にダイブ。そして一瞬にして元の枝先に戻って来ました。
目を懲らすと小魚をくわえてるじゃありませんか。
それから獲物を足下の枝に3回ほどたたき付け、あとはくちばしを立て、頭から丸呑みしました。
「オッオッオー、これぞ野生だ!」
声を上げると同時に、カワセミに……、惚れ込みました。
その日を境に、漫然漠然散歩から脱皮し、イケメン君の追っかけウォーキングが始まったのです。
そして数ヶ月後には――、やっぱり人間て、欲深いものなのですね。
水面を破り、小魚をくわえ飛び出してくる、その一瞬を写真に撮ってみたいと思うようになりました。
そのためには高級一眼レフカメラが必要です。その成り行きに任せたというか、やっぱり辛抱しきれずに買いました。
されどもここで問題が、すなわち、良い道具があっても腕がない。
こんな見通しの甘い行動を深く反省。
されども、あとはイキオイとハズミで、町の写真教室に通い始めちゃいましたがな。
先生はギャルお姉さん、年の差を乗り越えてしっかりと教えてもらいましたぜ、これぞという感動の写真を撮る方法を。
先生はトーンを一段上げて仰いました。
「要は、多く撮ることです、その中の1枚が傑作なんですよ」と。
ホッホー、写真の極意とは――『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる!』――だったのかとヤケに納得致しました。
そしてこの指導に従った結果、まさしく事態は明々白々。
すぐに卓上メモリーがパンク、つまり処理仕切れず保存の山となったわけです。
しかれども現場で出会うカワセミ野郎は素晴らしい。
小生が一番惚れ込んだ動作は、やっぱりホバリングでしょうか。
川面の上で、まさにピタッと一点静止飛翔。それはオスプレーより精度がきっと良いぞ。
そしてその空中一点から水中へと垂直ダイブ、これってメッチャかっこいいし、スタンディングオベーションものです。
されども人間て、やっぱり移り気なんですよね。
二つの夏を越えてしまうと、カワセミ以外の野鳥は「ドンナンカナア?」となりまして、山ウォーキングをするKS山のハヤブサに興味が移りました。
こっちはとにかく絶滅危惧種でっせ。だから巣のある断崖を前にして、バズーカーレンズが並びます。
されども私の場合は、そんな高級レンズを買う資金力がありません。
ならばここは金欠者の根性で、目にも止まらない時速100Kmの飛翔、その一瞬を撮ってやろうと決意致しました。
その上にですよ、反骨というかザマミロ精神むき出しにして、バックは満開の山桜であるべしと構図設定をしてしまいました。
こんな超難度、果たして可能でしょうか?
ここは素人の何でもありの猪突猛進で、たった一人プロジェクトを開始。
結果は高速連写によるピンボケ写真が……、カワセミの場合の100倍はあるでしょうか、ウン万枚がPC外付けメモリーにてんこ盛りとなりました。
しかしですよ、『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる!』、ギャル先生のお言葉通りだったのですよね。
万に一つ、それがあったのです。
遂に、満開の山桜を背景に高速飛翔するハヤブサ1枚をゲット出来ました。
そして、その一方で、春うららな頃のことでした。
元々KS山はオオルリが多くいると聞いていたのですが、その頭部にある水色の毛並みを近くで見てしまったのです。
この色合いを見て、心臓が飛び出すほど驚きました。こんな美しい淡いブルー(カラーチャート #bffに近いと思いますが)を被った野鳥がいるのかと。
要は一目惚れです。
だいたいオオルリは春から初夏に高い梢で鳴く鳥。だから胴体の深みある瑠璃色は視認できますが、冠の淡いパステルブルーは確認できません。
されども4月、5月頃には水浴びに現れたりするので、幸運ならば低い位置で頭部までも確認できます。
ブルーバード、それは幸せを運んでくれると言われてます。
それからはとにかく何度も通いました。
そしてやっとチャンスを得て、神秘すぎるオオルリの上頭部の淡いブルーが撮れました。
まことにラッキーでした。
とはいうものの今も必死の思いで探し続けてる鳥がいます。
それは夏の渡り鳥、サンコウチョウです。
ツキ(月)、ヒー(陽)、ホシ(星)と鳴くので、漢字では三光鳥、尾羽が長く、非常に珍しい野鳥です。
昨年ハヤブサ撮影中、ふと振り返った時に、そんな鳥が目の前の木に突然現れたのです。
そして蝶々のようにヒラヒラと優雅に飛んでるじゃありませんか。
目の玉が飛び出るほど驚きました。
とにかくレンズを向けましたが、ハヤブサ飛翔向けのシャッター・スピード1000以上ですから、
結果は当然、大々ピンボケ。
初めて遭遇したサンコウチョウ、……、悔しい!
あれ以来、ずっとずっと探す日々が続いています。
こんなドタバタも経験し……。
そして『after 幾星霜』、長い人生の旅路の果てに初めて気付いたのです。
車で10分の所にいろいろな野鳥が飛び交う、とてつもなく広い自然界がある。
それは人間界から見て別物だと思ってましたが、森羅万象、要は人間界は大自然の小さな一部だったのだと。
日記『after 幾星霜』…最近気付きました! 鮎風遊 @yuuayukaze
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