2話 フラメンコギター 20200829
ギターを習ってかれこれ6年になります。
えっ、オッサンがギター、なぜ? って怪しげでしょうが……。
実は随分と昔、学生時代に<禁じられた遊び>とかをポロポロと弾いていました。
だけれども就職後ギターを絶ち、長い間手にしたことがありませんでした。
それから幾星霜を重ね、今の年金生活へと雪崩れ込みました。
起床するための目覚まし時計も必要でなくなり、実に気楽。しかしながらどことなく張りがない。
そんな時に考えました、青き青春時代にやり残し、かつ置き忘れてきた事は何だろうかと。
そしてほぼ半世紀前が蘇り、思い立ったのです、「そうだ、ギターを弾こう!」と。
それも当時憧れていたフラメンコギターをです。
今から思うと、このハズミとイキオイが小さじ一杯分の才能しかない小生を地獄へと旅立ちさせたのです。
ではありますが、その道中でいろんなことに気付かせてくれました。
厚かましくもまずはそれらを列記させてもらいますと……。
(1)
当たり前のことですが、やっぱり才能ある人はすぐに上達しはりますし、とどのつまり上手い。
心底この無慈悲な現実に気付きました。
(2)
されども好きこそ物の上手なれ、この金言名句を真剣に受け止めて、練習に練習。
でもですね、ちょっくら1曲弾けるようになるのに1年はかかる現実がありました。
(3)
けれどもその過程で問題は、5日間弾かないとほぼ弾けなくなるという法則。
現状レベルを100としますと、連続で練習しない日数n後のレベルYは
Y=100-4n² となるようです。
こんなまことに無慈悲な方程式を神様は仕掛けていたのです。
月謝に楽譜、ならびにCD等。その上に夕食1品減らさなければならないほどの贅沢ギター。そして6年間という途方もない時間。
これほどまでに犠牲を払ってやっとジャカジャカと不正確ながらも弾ける曲、それらはソレア、ブレリアス、ティエントスなどのたった6曲。
とどのつまり、これらが弾けなくなることは、ドブに金と時間を投げ捨てるようなものなのですね。
だから、だから、……、これが地獄の始まりだったのです。
まるで泳ぎ続けなければならないマグロのように、毎日弾き続けなければならなくなったのです。
その上にレパートリーが増えたといっても、例えばソレアのたった1節を6年間練習してますが未だうまく弾けません。
このようにして1日に弾かなければならない量はどんどんと膨れ上がりました。
だけれどもですね、本当にまれなことですが、ちょっとした奏法がうまくいく時があります。
それはまるで拾ってきた石っころを毎日毎日磨いていたら、突然キラリと光る砂が現れた、てな感じでしょうか。
このような経過を経て、学生時代からの『after 幾星霜』、やっと気付いたのです。
労多くしてもまことに小粒な喜びしかない。それでも六弦を奏でることが止められない。
小生にはそんな地獄を彷徨うマゾ気質、いや病気があったのだと。
さてさて読者のみな様は如何でしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます