第22話 『懐かし―――』

「さあ、ゲームを始めよう」


 託は笑みを浮かばせそう言った瞬間、視界全体が真っ白になった。


「…………?」


 数秒白い空間が視界に広がり、また景色が変化する。


「ここは……」


 見たことのある光景、懐かしい景色だった。驚くというより、嬉しかった。この景色を見ることが。


「東京……」


 高いビルが立ち並び、人通りが多い。前まで当たり前のように見てきたこの景色が約1年と半年ぶり、託のせいでだが、託のおかげで見ることができている。こんな複雑な気持ちは二度とない。

 俺は周りを見渡し、クエストのクリア条件を探し始めた。


「少しくらいは教えとけ……クリア条件がないと何もできないだろ」


 愚痴を言いながら歩いていると『1人』を見つけた。よく分からないが、そう思った。


「あなたは、だれ?」


「え……?」


「あなたは、だれ?」


 何度も何度も聞く『1人』。姿は人であっても性別も、髪型も、声は深い暗闇から言っているようにしか分からない。ただ、『1人』が俺に聞いてくる。


「……サクト」


「あなたは、だれ?」


『サクト』と言っても、『1人』は首をかしげるだけでまた聞いてくる。まるで、『サクト』が名前ではないと訴えるかのように。


「サクト、俺の名前はサクト」


「…あなたは、だれ?」


「―――桐原卓也」


 俺は、頭の中に浮かんだ名前を言った。すると『1人』は聞くのを止め、後ろを向く。


「ついてきて」


「……あ…分かった」


 ただ黙って『1人』について行く。見慣れた場所をただ歩いて、ついて行く、何かがありそうで怖い。


「ついたよ」


 歩いて3分もかからずそう言われた。


「ここ、何もないけど。草原……?」


「ちがう。この世界を壊す『もの』がある場所」


「なんだそれ……そんなもの、あるはずが―――」


 目の前にあったのは、『もの』なんかじゃない。『モンスター』だった。


 *


「これは……想定外だ」


 私はゲームがしたかった。なのになぜ、なぜお前がそこにいる。

 画面に映し出されている『1人』。これが誰なのか私は分かっていた。唯一尊敬していた、羨ましかった存在。その名は『桐原卓也』。ゲームのキャラクターに生まれ変わっているなどでなければ生きていることがおかしくなる。400年以上生きている存在だからだ。


「こんなはずではなかった。……だが、これはこれで面白くなりそうだ」


 私は、画面を見て笑みを浮かばせた。

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クエストソード・オンライン 吉田 風大 @yoshidafudai

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