第4話
そして野分は、名無し子と暮らすことに決めました。こうなったらとことん目の内に溜まる泥を
熊の長老にそう伝えると、最初は
そうして次の日、山の向こうから昇ってこられるお
お天道さまは名無し子へ「ナギ」という名前を授けられました。すると、ナギはぼろぼろと泣き始めてしまったので、野分は深くため息を吐きます。
「どうしてお前は泣いてばかりいるのだろう。たかが名前を頂いただけじゃないか」
「それでも、わたしにとっては大切な名前だよ」
ナギは顔中くしゃくしゃにして笑いました。そういう忙しいところは実に子供っぽくて良いのだが、と野分は思いました。
さて、それから野分はナギにしっかりと山の生活を教えました。
ナギは教えを一つ一つ忠実に守りましたが、それでも時には力及ばず、雄大な自然に呑まれることもありました。その度に野分は「や、や、それはいかん」と
「子供というものはとにかく向こう見ずで、
そうして
山のみんなも驚いて「野分はとうとう改心でもしたのか」と思いましたが、野分にその気は一切ありませんでした。
「一体全体、どうして俺が心など改める必要があるか、まったく馬鹿馬鹿しい。俺はどのような境遇におかれていようと俺なのだ。風で、気まぐれで、朱の切れ端を
野分は山に向かって訴えましたが、誰も彼の話を信じませんでした。
ただ、ナギだけはくすくすと笑いながら、朱色の激しく舞り狂うさまを、楽しそうに見守っているのでした。
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