伝統あるそば
アホ
第1話
久しぶりに実家に帰った
駅から10分ほど歩くと年季の入った看板に
蕎麦屋と書かれている
シンプルすぎて笑えるわ
戸開けて中に入る
「いっらしゃいませおひとりとりさ…」
俺にいっらしゃいませって言った人が言葉を止めた
まぁ分かるよ驚くよね家出した子供が帰ってきたんだもんな
母さんは俺の見ると手を引いて厨房の中に引っ張っていった
「ちょい抜けるよ」
店主にそう声をかけた
まぁ店主っても俺の親父だけどな
親父は俺を見て事情を察したのか了承に意を示した
「帰ってくるなら電話ぐらいよこしなさいよ。今日は止まっていくのかい」
母さんは何も言わずに帰ってきた俺を優しく責めてだけで何も聞いてこなかった
「あぁ今日は泊まるよ」
「そうかい」
母さんはホッとしたような嬉しそうな感じを見て胸が苦しくなった
「じゃ母さんは接客に戻るから上で休んでなさい」
分かったって言うと母さんは仕事に戻って行った奥を進んだ場所に階段があるから二階にのぼりかつての自分の部屋に入った
そこは昔から変わらず畳の上に机があって好きな野球選手のポスターが貼ってあった
勉強するときこの選手みたいになりたいと思って勉強してたっけ
懐かしいな少し目元が熱くなるった
机に下に腰を下ろし感傷に浸っていたら
だいぶ時間が経っていたみたいだ階段から足音が聞こえる
部屋のドアからトントンと鳴らされた
入ってきたのは親父だった
親父は俺の手前までくると腰を下ろした
親父は何を話せばいいのか分からないのか
ずっと沈黙していた
俺も分からんから沈黙しているのでお相子だな
長かった沈黙は親父によって破られた
「そば打た方覚えているか」
身構えていた俺には予想外の言葉だった
ただその言葉で心に抱えていた苦しみが嘘のように消えていった
俺は涙を流しながら言った
「おぼえてる」
伝統あるそば アホ @lnceptor
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