第2話

「は、晴樹くん。性急すぎない?」


ベッドに寝転がった隼人さんが頬を紅潮させた。

今日は初めて俺の家に泊まりに来てもらったのだ。

まあ初めての家だし、泊まりだし、興奮しない訳がない。

家に上がって即行ベッドへ押し倒した結果がこれだ。


「だって俺隼人さんとはやくしたいです」


「にしても早くない?!家ついたばっかりだよ?もっと、こう…ゲームしたりとか…色々あるんじゃない?」


「前々から思ってたんですけど、隼人さんって頭ん中少女漫画詰まってるんですか?」


「詰まってないし読みもしないよ!ただ俺は恋人らしくしたいと思ってるだけで……」


ごにょごにょと尻込む姿がいじらしい。

たしかに体が目当てだと思われても嫌だ。俺とて隼人さんが好きだし、恋人らしくしたい。

けれどしたいものはしたい。


「わかりました。じゃあゲームしましょう」


「おっ!しようしよう!今時のゲームはどんなのがあるの?」


こんなのです、と隼人さんの手に携帯ゲーム機を渡す。

するとしばらくして彼が首を傾げた。


「あれ?これ一台で二人で遊べるの?」


「いや、無理ですね」


「えっ」


「だから俺は隼人さんが遊んでるのを一緒に画面見てます」


そんなので楽しいの?と言いつつも電源を入れて遊ぶ気満々のようで。

実はこの人俺と年齢逆なんじゃないか、というくらい子供っぽい。

そんな彼を後ろから抱え込むように抱きしめる。

一瞬くすぐったそうに身を捩らせたけれど視線は画面に釘付けになったまま。

ゲームにのめり込み始めたところで俺の手がするりと伸びる。


「わーマリオだ、懐かしいなあ……えっ、今は弟くんも使えるようになってるの?!すごいね……って、ちょっと!」


「はい?」


隼人さんの服の下に伸びた俺の手をがっちり掴まれる。


「何してるの!ゲームするんじゃなかったっけ!?」


「ゲームするのは隼人さんでしょ。俺はゲームしてる隼人さんで楽しみますから」


「何それ?!しないって言ったのに…!」


「しないですよ。触るだけ。でも誘惑に負けて隼人さんがしたくなったらしましょうね」


「…絶対しないから。夜までぜっったいしないから!」


夜ならいいんだ、という言葉は飲み込む。


「なら頑張ってゲームに集中してくださいね」


まるで決闘を申し込まれた少年のような面持ちでいそいそとゲームを続けるので、こちらも滞りなく再開するとしよう。

服の下に潜らせた手で腹を撫で上げると僅かに腹筋に力が入るのが伝わった。

徐々に撫でる位置を上げ、それが胸な差し掛かると隼人さんの反応変わった。


「………あ」


初体験から数回しているのだが彼はまだうまく喘げない。

その理由はわかっていて、“わざと”喘ごうとしているのだ。

そういう時はうまく声が上擦らずに下手なビデオの女優のような棒読みになる。


「隼人さん?ゲームに集中してていいですよ。無理に声出さなくても大丈夫ですから」


「だって、ほら、声出して喜んだほうが興奮する、でしょ?……しない?」


「そりゃあ気持ちよさそうに喘いでくれたら嬉しいですけどね。でも俺隼人さんの体触ってるだけで興奮するんで、気にしないでいいですよ」


狙って言ったその言葉に隼人さんの顔がボッと日照る。

なんでこの人はいつまでたっても生娘みたいな反応すんだろ……えろいな。

そんな事を思いながらすりすりと彼の胸を撫で回すと、上がった息を吐く短い吐息が聞こえてくる。

突起を触れながら彼の肩に顎を乗せてその耳をぬるり、と舐め上げた。


「んっ」


発した声はわざとらしいものではなく、自然と漏れたものだとすぐにわかった。

良かったらしい。

味をしめた俺は執拗に胸を、耳を舐め続ける。

縁は唾液が滴り、それをキスをするように吸うとなんとも生々しい音が鳴った。

音源が耳という事もあってか、その音に隼人さんの肩が一段と震え上がった。


「ひ、あぅっ!」


何度も、何度もその音を耳元でたてる。

気持ちよさそうな隼人さんの声を聞きながら、ふと思った。


「ねえ隼人さん。この耳吸う音、ほぐしてる時の音に似てません?」


そう言うと隼人さんの肌がブワァっとたちまちに首まで真っ赤に染め上がった。


「あれっ、もしかしてずっとその音と似てるなぁって想像しながら聞いてました?だから興奮しちゃったんですか?」


「ち、がっ…ちがう……」


「ふぅん…じゃあこれから想像しながら聞いててくださいね」


くちくちとわざと勢いを早めたり遅めたりしながら耳を舐めると思いの外効果があったようで、隼人さんの声はさっきより甘く響き始めた。

それを見計らって今度は下半身に手を伸ばす。

チャックを下げると「やだ、下は触らないで」と口では嫌がる素振りを見せた。

が、体は一切の抵抗を示さない。

それに気を良くして一気に隼人さんのものに触れた。

気持ちよくなり過ぎないようにそっと、指で掻くように、ゆっくりと。


「あっあっ、晴樹くん、違う、違うっ」


「んー?何がですか?あっ、ゲーム機落ちますよ、ほら、ちゃんと持って」


ゲーム機を手離して自分で触れようとする手を阻止する。

すると堪らなくなったのか今度は腰をくねらせ始めた。

しないって言ったけど目の毒すぎ……。

もっと強く激しく触りたい気持ちを抑えて、変わらずカリカリと引っ掻くような焦れったい快感を与え続ける。

気持ちよさそうな声は漏らすものの物足りないのだろう。腰の動きが止まらない。


「ねぇ、隼人さん。したくなりました?」


片手で胸の突起を弄ぶ。


「物足りないでしょ?もっと、欲しくないですか?」


耳を執拗にねぶる。


「ちゃんと気持ちよくなりたいでしょ?」


腰に固いものを押し当てる。

それに反応して小さく背中を震わせた。


「した、い」


「なんて?」


「したい…もう、治んない、しなきゃっ、治んないから…」


にやりと顔が歪むのが自分でもわかる。

ゲーム機が点きっぱなしなのもお構いなしに放り投げ、隼人さんをベッドへ引き上げる。

なるべく早くと服を脱いでいると視線が突き刺さった。

じーっと見られているのだ。


「なんですか。見てないで自分で脱いで下さいよ」


「えっ、自分で?それはそれで恥ずかしくない…?」


「恥ずかしいなら恥ずかしいでこっちとしては好都合なんですよねぇ。恥ずかしがりながら脱いで下さいよ、ねっ」


期待に急かされるようにおずおずとシャツを、ズボンを、下着を脱いでいく。

あれっ、なんか俺すげーストリップ見てるみてえ。

全て脱ぎ終えたのを確認して俺がごろんと寝転がった。

予想はしていたけれど隼人さんは困惑した顔で慌てている。


「えっ?えっ?どうしたの?」


「隼人さん“が”したいんでしょ?ならして下さいよ。隼人さんが」


「どういう、」


「お馬さんごっこ、しましょうよ。ね」


俺の体勢とその言葉に何を要求してるのか想像がついたようで、ぶんぶんと首を横に振った。


「だってしないとそれ、痛くなっちゃいますよ?もどかしいんでしょ?なら、ほら、しないと」


しばらくうーうーと唸った後、じゃあひとつだけお願いがあると意を決したように腰を浮かせた。


「ほぐすの、は、して…」


その一言で下半身に血が集まるのを感じた。

なんだこの人……どこのえろ男優だよ…………。


「わかりました、じゃあ足開いて跨いで。そう、そのままでいて下さいね」


言われるがまま跨った隼人さんを約束通り指でゆっくりと柔らかくする。

二本目というところで背を伸ばしてるのが辛くなったのか、腰を折って俺に覆い被さるように倒れこんだ。

これはいい。キスがしやすい。

ぐちぐちと指を動かし続けると次第に喘ぎ声は大きくなり、支えていた腕にすら力が入らなくなったのかぺたんと俺の胸に伏せってしまった。


「うっ、んん、はぁっ、も、もう大丈夫…だから…指抜いて…」


「もういいんですか?」


「んっ、大丈夫…もう、いれ、たいから…」


そう言ってゆっくり起き上がり、腰を俺の足の間に据える。

あっそういえばゴム忘れてる。

慌ててベッドの上の棚を漁るとそれに気付いたのか隼人さんが小さく声を上げた。


「あっ、晴樹くん。今日は、その、無しじゃだめかな…」


「は?!え、でもしないとお腹壊しま、」


「ちゃんとした後、晴樹くんが掻き出してくれる、でしょ?」


俺の中で何かが崩れ去った音がした。


「あ、あぁ〜〜〜……はい、やらせていただきます……」


返事に満足したのか、隼人さんの腰がゆっくりと降りてきた。

柔らかなものに当たり、ゆっくり、ゆっくり彼のペースではいっていく。


「あっ、あぁぁっ、ど、しよう…はぁっ、これ、すごい…奥まで入っちゃう…」


「どうもしないですよ、大丈夫大丈夫。ゆっくり俺の上に座って」


「んっ、むり…!むりだよこれ、入んない…」


後少しというところで腰を上げようとする隼人さんの腕をグッと引っ張って阻止する。


「一人じゃできないなら手伝ってあげますから」


何かを察した隼人さんが逃げるより早くその腰を捕まえて思いっきり引き寄せた。


「っひあぁ?!!あっやあ、ふかい…んんっ」


良かったのだろうか。

今までで聞いたことのない甘くて刺激的な声が溢れて止まらない。

しばらくひんひん喘いでいると留まる事に慣れたのか、ゆっくりと自分の腰を揺らし始めた。

ただ初めてだから仕方ないのだが、心底もどかしい。

それは隼人さんとて同じなのだろうが。


「はあ、はあ…は、晴樹くん、きもちい…?」


「んっ…はい。気持ちいい、ですよ」


物足りないけど。

言わなかったその言葉が伝わったのかそうでないのかはわからないけれど、次の瞬間その動きがはやまった。


「嘘、晴樹くん、いつもはもっと…気持ちよさそ、にするのに…はぁっ…がんばるから、気持ちよくするからぁ……」


俺の腕に掴みながら必死に腰を上下する姿は健気でもあって、同時に俺の興奮を掻き立てた。

ずくん、と大きくなるのがわかる。

それを隼人さんも体で感じたのだろう、体を大きく仰け反らせた。


「やあっ、なんでっ」


もう抑えなんて効かない。

隼人さんの腕を真下へ引っ張り、下から思い切りその体の中心を突く。


「まっ……やあぁぁ!!あっんっ、はぁっ!激し…んっんっ、あぁ!」


ぐちゃぐちゃといかにもな水音が大きく響く。

やたら甘ったるい声が、激しく擦れる濡音が、ベッドの軋む音が、汗が、全てが俺を絶頂へと誘う。

激しさを増す行為の中、隼人さんがキスを求める。

彼から伸ばした舌が愛おしくてキスをした唇が離せない。

キスのせいで息が思うようにできない息苦しさや、激しさを増す腰、擦れる体に我慢できなくなったのか隼人さんの背が一際跳ね上がる。


「んっふっ…もう、あっ!イッちゃ、う…!あっあっ、はる、き、くんっ!んっ、あぁぁぁっ!」


同時とはいかないがほぼ同じくして俺も達し、お互いぐったりとそのまま力が抜けてしまった。


「はあ…はあ…んっ、お風呂、入った時にちゃんと掻き出しましょうね」


「んっ…おねがい」


その時にまたどうせ中を汚す事になるのだろうけれど。

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純情おじさんと年下ボーイ なふやん @nahuyan04

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