第14話 これからの彼次第 ★



 その様を見て、セシリアはニコリと微笑んだ。

 そして。


「私からはこのくらいでしょうか」


 そう告げる。


 

 そこには、もう当初の当初の途方に暮れた絶望感は無い。


 何も解決はしていない。

 まだ知っただけ、やっとスタートラインに立っただけだ。


 しかし。


「大丈夫ですか?」


 やれそうか。

 そんなセシリアの問いに、クラウンはコクリと頷く。


「頑張ってみる」


 この先の指針も決まっていない。

 しかし彼にとって、スタートラインに立ったという事実がまず大きい。


 事を把握し、助言を与えられた。

 考え方の筋道を立ててもらったクラウンには、あまりにも考えるべき事が沢山ある。


 しかし、だからこそ気持ちを沈ませている時間など無い。

 少なくともセシリアには、そう思っているように見える。


(実際、うだうだと無為なことを考えているよりも、そうやって時間を過ごす方が余程効率的だ)


 セシリアは、そう思って内心で頷いた。

 そして最後にこう言う。


「貴方がご自分の望む物を得ることが出来る様に、私も陰ながら祈っています」


 そんな彼女のエールに、クラウンは「あぁ」と言った。

 そして少し躊躇する様な素振りを見せた後、少々口をまごつかせながら口を開く。


「世話になった。その、あ、ありが、とう」


 それは、まるで初めて誰かに「ありがとう」と言ったかの様なぎこちなさだった。

 そんな彼に「いいえ」と答えながら、セシリアはゆるりと手を振って見送る。



 こうして敵対関係だった筈の二人は、良好な空気感の中で別れを告げたのだった。




 これは、クラウン・モンテガーノのあがきの始まりだ。


 『藁にも縋る』ような思いでセシリアを頼り、知り、受けた助言を、彼が一筋の光にする事が出来るかどうか。

 そして今を、将来懐かしく振り返る事が出来るかどうか。

 その答えは、まだ未知数だ。


 つまるところ、これからの彼次第という事である。





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 当該話数の裏話を更新しました。

 https://kakuyomu.jp/works/16816410413976685751/episodes/16816410413991654118


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