第7話孤児院開設

 俺は密かにその場にあった薪の全てをダイヤモンドにした。

 そのうちの一個をまた老人に渡して、この国で使える金銀銅貨に変えた。

 金を確保してから寄宿舎に行き、子供たちと一緒に温かい食事をお腹一杯食べた。

 寄宿舎では大量の薪を注文して、全てをダイヤモンドにした。

 老人との信頼関係を維持するために、約束を守り五十円硬貨二百五枚を渡した。

 そこからの話は、最初の不安が嘘のように、とんとん拍子で進んだ。


 翌日には、老人が一人の屈強な自由戦士であろう戦士を連れてきたが、俺には自由戦士の価値が分からなかった。

 そこで露天商に捕まった少年に確認してみたら、自由戦士は特別な戦士で、全幅の信頼を置いても大丈夫だと言うので、彼と正式な契約を交わした。

 昨日千個を超えるダイヤモンドを作ったが、そのうちの十個を自由戦士に預けて、雇えるだけの自由戦士を集めてもらう事にした。


 八人の自由戦士と十六人の見習自由戦士、さらに八人の自由戦士の戦友三十一人を雇うことができたのは、この都市に来てから一カ月以上たったころだった。

 それまでの間に、俺は一万個以上のダイアモンドを確保してしていた。

 護衛の戦士が確保できたことで、いよいよ移動することになった。

 その頃には、俺は子供たちや露天商たちとも、安心して話せるようになっていた。


 移動する日となった時、老人は全ての露天商とその家族を俺に雇わせたようで、全員で強欲な領主が治めると都市から出て行き、別の住みやすい都市を目指した。

 だが強欲な領主に眼をつけられるのは危険なので、四つの城門に分かれて、しかも何日も日数をかけて、一度に都市を出て行かないように工夫した。

 それがよかったのか、それとも気が付いていても自由戦士が怖かったのか、何の問題もなく都市から出ていくことができた。


「なあ、全ての子供たちが自立できるようにするには、村を作った方がいいのではないか、農地を確保した方が安定するのではないか?」


 俺たちは目的地の都市に着くまでに間に幾つもの村を通過したが、どの村にも食うや食わずの農民や子供がいて、見捨てる事などできなかった。

 餓死寸殿の小作家族や、人買いに売られそうだった子供を金を出して引き取り、他の孤児たちと同じように保護した。

 だがその度に、どれほど慈悲深い領主の治める都市であっても、都市内で自給自足するのは不可能だと思ってしまった。


「確かに商人として都市で生きていける人間には限りがあるが、未開地を開拓して農地にするのは生半可な努力では無理だぞ。

 村を護るための戦力は十分だが、本当にいいのか?

 露天商としての知識と技能なら、俺たちが子供たちに教えてやれるが、農民としての技能と経験は、俺たちでは教えてやれないぞ」


 俺は悩みに悩んで、まずは拠点となる都市に孤児院を設立し、そこで商人や傭兵としての技能と経験を積ませ、その上で開拓村を作ることにした。

 資金的には何の不足もないが、凶作で食糧がなければ、金があっても食糧を購入する事ができない。

 生きていくために一番必要なのは食糧なので、孤児たちに希望がないのなら、農民として育てようと思う。

 その為のこの世界で孤児院を設立運営するのだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界孤児院 克全 @dokatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ