第6話条件交渉

「この硬貨はどれくらいあるんだ、銀以上の価値があるようだから、銀の倍で買い取ってやるから、あるだけ出せ」


 老人が高圧的な態度を取り始めた、よほど白銅貨が欲しいのだろう。

 だが、先ほどからの態度を見れば、不当に俺を死傷させて奪う気はないようだ。

 ここは真っ当に交渉した方がいいだろう。


「この硬貨を売るのに問題はないが、数に限りがあって、子供たちをずっと養うのなら、もっと価値があって数の多い物がいいのではないか?」


「この硬貨を全て売ってくれるという言葉に嘘はないのだな?」


「嘘はない、ないからこいつを確かめてくれ、こいつの方が数があるんだ。

 こっちの国に来る時に、故郷で価値のある宝石をたくさん持ってきたんだ」


「分かった、見せてもらおうか、どれだ」


「これだ、これが俺の故郷で一番価値のある宝石だ」


「これは、ダイヤモンドじゃないか、これを大量に持っていると言うのか?!」


「ああ、盗まれては困るから、この都市の周囲の、ある場所に埋めて隠してあるが、この国で拠点を作るために大量に持ってきた」


「このダイヤモンドが幾つあるというのだ?!」


「まず教えてくれ、この大きさと透明度のダイアモンドでどれくらいの価値がある、それによって子供たちを助けられるかどうかが決まるんだ」


「そうか、そうだな、その為に交渉しているのだったな、分かった、教えよう。

 この大きさでこの透明度なら、金貨で百枚の価値があるだろう。

 それだけあれば、こんな強欲領主の都市を離れ、もっと安心して暮らせる領主の治める都市に、孤児院を作ることができる。

 どうだ、俺たちを雇わないか、雇ってくれるのなら、全ての準備をしてやる」


「料金はどれくらいになっているんだ、貴男を信じない訳ではないが、雇うと言ってダイヤモンドの隠し場所に案内させられ、殺されては元も子もない」


「そうか、そうだな、それくらい慎重でなくてはいけないな。

 分かった、手付にそのダイヤモンドを渡してくれれば、自由戦士を紹介してやる。

 自由騎士なら裏切る心配がないから、アンタも安心できるだろう」


「分かった、その代わり、あの子と他の子供たちを全員集めてくれ。

 手付にこのダイヤモンドを預けるから、集めた子供たちに、清潔な寝床とお腹一杯の食事を用意してやってくれ、その姿を見なければ、俺も安心できない」


「分かった、だが、子供たち全員を一度に同じ高級ホテルに案内する事はできない。

 子供たちの身なりでは、高級ホテルには入れないんだ。

 だから寄宿舎を確保して、そこで身体を清潔にして服装を整え、高級宿にも泊まれるようになってもらう、それでどうだ?」


「分かった、それで頼む」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る