最後の物語そして次への物語

彼女が死んで僕はぼっーとしていた。無意識に「神楽小枝」の作品をチェックしようとした。しかし「神楽小枝」というユーザーは消されていた。当然それに伴って作品も消されていた。

僕は彼女の死のショックの上にさらに別の角度からショックを重ねられた。

ショックが大きすぎた僕はしばらく小説を書く気にはならなかった。彼女との繋がることのできた小説というものを見るのが嫌になって、僕が書いてきた小説を全て消した。






数ヶ月後。僕は彼女の死から立ち直ることができていた。この数ヶ月考えていたことがある。それは「神楽小枝」についてだ。

今更だが、「神楽小枝」は彼女だったのではないかと考えた。消されたタイミング的にも、ヒロインの状況も彼女だと思わされることばかりだ。

確証はない。だけど、確信している。

それは僕の勝手な妄想かもしれない。そんなこと普通なら人に言ってもあり得ないと一蹴されるだけだろう。

そこで、夢を見た。彼女との初めて会った時の夢だ。その夢の中で僕は思い出した。妄想かもしれないことを人に一蹴されずに伝える方法を。

僕と彼女の繋がり。小説。

妄想かもしれないことを書こうと思ったが、根本的に彼女が病気じゃなかったらを書けばいいんじゃないかと考えた。

彼女のことを考えると小説への考えが浮かんでくる。これは彼女への冒涜だろうか。

それでも、書かなくちゃいけない理由はないけれど、僕は書きたい。もし彼女が病気じゃないかったら、もし「神楽小枝」なら、もし僕が告白していれば、もし…………。

幸せな話だろうか。希望があった話だろうか。感動するような話だろうか。

「神楽小枝」の作品の2度死ぬとあったが、それなら小説で生きる彼女は永遠に死ぬことなく生き続けることができるだろう。

ちっぽけな僕の身勝手で、理想の小説をここに書こう。何通りの物語があるかわからないが、僕の人生を賭けて彼女の生きたことを僕が、世界が忘れないように。

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君の命を抱いて書く 春ノ夜 @tokinoyo

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