第68話.神と悪魔の共同②

 夢城真樹ゆめしろまき福地聖音ふくちきよねは、二人で廃工場内を散策したが、特に誰かが住んでいる気配は無かった。


「誰も……おらへんで?」


 聖音がぼそっと言う。


涼太りょうた君が言った場所はここに間違いないし、その彼がお姉ちゃんと呼ぶ人がここにいるはずなんだけど……。住む場所を変えたのかしら? それとも涼太君が嘘を言ったとか……」


 真樹が答えた。


「涼太君は嘘を言うような子やない!」


 聖音が声を荒らげる。


「そーいう決めつけと感情論、嫌いよ」


 真樹が真顔でいなす。


「お前は悪魔やから、人を見抜く力が無いだけや」


 聖音は真樹を睨みつけると、さらに廃工場の奥へと足を踏み入れていった。


 いくら廃工場が広いとはいえ、それほど探索に労力がいる程の距離や面積があるわけではない。


 二人が工場の端に辿り着くまで、それほど時間はかからなかった。


「誰もいないわね……」


「隠れてる様子もなかったしな……」


「まったく無駄足だったじゃないの!」


 真樹は足元にある、錆ついた金属の板の上で地団駄を踏んだ。


 すると真樹は足から、その金属板が抜けそうな感覚があった。


 しかも彼女の踏む音の反響が、金属板の下から微かに聞こえる。


 二人は顔を見合わせた。


「この下に…‥、何かあるかも」


「この下に……、何かあるかもしれへんで」


 真樹が恐る恐る金属板を持ち上げてみると、案の定、暗い空間と鉄製の階段があった。


 二人は、同時に推測した。


 もしかすると、この下に誰かが住んでいるのかもしれないと。


 今度は真樹を先頭に、なるべく音を立てぬよう階段を降りてゆく。


 二人の推測が正しいとするならば、この下に何者かいて、足音で侵入を察して襲われるかもしれない。


 とはいえ、これは鉄の階段。


 どう注意深く歩いても、二人の足音が響いてしまう。


 しばらく降りると階下に明かり見えた。


 間違いない、誰かがここにいる。


 二人の推測は確信へと変わった。


 どうせ足音で気づかれているならと、真樹は足を早める。


 階段を下りると、「うわっ!」と真樹が思わず声を上げた。


 何故ならそこには、上の廃工場からは想像もつかない、白くおしゃれな部屋が広がっていたからだ。


 それだけでも驚いた二人だが、更に驚くべき光景が真樹と聖音の視線の先にあった。

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