第67話.神と悪魔の共同①

「えっ、涼太くんが言ってた工場ってのは、骨島ほねじま鉄工所?」


 夢城真樹ゆめしろまきは、共に児童館で働く神の福地聖音ふくちきよねを連れて、高梨涼太たかなしりょうたが言っていた工場の場所へとやってきた。


「なんや、ここ? もう潰れた工場やないか」


 聖音も目を丸くして驚いていた。


「ここに涼太くんがお姉ちゃんって呼んでる人が住んでるらしいけど……、この場所って、とても人が暮らせるところじゃないわよ?」


 真樹も首を傾げている。


「確かに屋根とか、ところどころ骨組みだけで、穴空いてるで? 雨降ったら雨漏りだらけで大変やん」


「場所、間違えたのかしら?」


「でも涼太くん、工場に住んでるって言うてたから……。それに垣屋かきや駅の周辺に工場ってここぐらいしかないで」


「じゃ、彼の相手はここに住み着いたホームレス暮らしのお姉さん?」


 真樹は腕を組む。


「とりあえず、入ってみよか?」


 聖音が真樹に提案した。


「そうね、それじゃあたしはアンタを不法侵入者として通報しとくわ」


「オマエは解決する気があるのかないのかどっちやねん!」


 聖音が眉を吊り上げ怒る。


「わかった、わかった。じゃ入りましょ。アンタが先頭であたしは後ろから付いていくわ」


「なんやねん、怖がりなやっちゃな」


 聖音が真樹を見下したような目で見る。


「怖がりなんじゃないわよ。相手が何者かわからないから、アンタが背後から襲われないように守ってあげようと言ってんの」


 真樹も語気を強める。


「フン!」


 鼻を鳴らして聖音は廃工場へと足を踏み入れた。


「何がいるかわからないから、気をつけて進むのよ。急に柱の陰から化け物が飛び出してきて喉笛に噛みつくかも知れないから、注意するのよ」


 真樹が聖音を脅す。


「うるさい! 化け物が化け物、怖がんな!」


 聖音は再度、真樹に向かって怒った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る