第66話.悪魔の推測と調査 ③

 児童館でアルバイトをしている夢城真樹ゆめしろまきは、同じくアルバイトをしている福地聖音ふくちきよねと共に、高梨涼太たかなしりょうたが来るのを待った。


「涼太くん!」


 彼の顔を見るなり、聖音が声を掛けた。


 涼太は驚いた顔で聖音を見る。


「あのな、先生達にこの間涼太くんが言ってたメタアースの話、もう一回、話して欲しいねん」


 聖音が涼太の両肩に触れ、優しく問いかける。


「さ、この可愛くて美人な先生にも、醜い聖音先生にしたメタアースの話、聞かせてくれる?」


 真樹も屈んで涼太の目線に合わせ、優しく言う。


「さ、この顔も性格も歪んだ先生にも聞かせてあげて?」


 真樹を指さした聖音がそう言うと、涼太は小さく頷いた。


 そして彼は以前、聖音に話したことと全く同じ話を、真樹にも語り始めた。


 もうすぐ世界が消えること、消える世界から生き残るにはメタアースに登録しないといけないこと、でも家族は自分の話を信じてくれないこと、そして「お姉ちゃん」がその事実を教えてくれたこと。


「そこでね、涼太くんに聞きたいんだけど、そのメタアースのことを教えてくれた『お姉ちゃん』って、涼太くんのお姉ちゃん?」


 真樹が優しく尋ねる。


「ううん」


 涼太は首を左右に振った。


「じゃあ、誰なのかな? 親戚の人?」


「公園で出会ったお姉ちゃん」


 涼太が答えた。


「そうなんだ。じゃあ、そのお姉ちゃんは何をしてる人?」


 真樹が訊いた。


「家出してる人」


「えっ、そうなんだ」


 真樹は驚き、目を丸くした。


「何歳ぐらいの人なん?」


 今度は聖音が訊く。


「知らない」


「うーん、相手は家出中の女性? これじゃ

 どこの誰かわからないわね」


 真樹は腕を組んで、落胆した。


 その「お姉ちゃん」が世間のメタアース事件に関して何かしらの繋がりがあり、彼女が解決の糸口になるのではないかと期待していたからだ。


「……でもお姉ちゃんのお家には行ったことある」


 涼太がぼそっと言った。


「えっ、ほんと!? 家出してるのに彼女のお家に行ったことあるの?? そのお家、どこだったか覚えてる?」


 真樹は食いつくように涼太に訊いた。

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