第65話.悪魔の推測と調査②

 夢城真樹ゆめしろまきは、サバト人生相談所所長、贄村囚にえむらしゅうにメタアースの黒幕の調査と捜索を命じられたものの、何を手掛かりに探せば良いのか分からず、途方に暮れていた。


(どこをあたればいいのか、皆目見当もつかないわ。またアテもなく街中を彷徨さまよわなければならないのかしら。まったくシュウは人使い……いえ悪魔使いが荒いんだから。あたしは低級の使い魔じゃないのよ。スーパーにお使いぐらいはするけど。こういうのは何ハラスメントっていうのかしら。悪魔だからやっぱりデビルハラスメント、略してデビハラ……とか。なんちゃって)


 真樹は腹に不満と難事を溜め込み、ぶつぶつ独り言を発しながら児童館内の掃除に勤しんでいた。


「なあ」


 児童館で共に働く神側の福地聖音ふくちきよねが、棘のある声色で真樹に話しかけてきた。


「なによ」


 真樹も突き刺すような声で、聖音に目も合わせず返事をする。


涼太りょうた君の様子がおかしいねん」


「あの子はおじいちゃんが亡くなってから、ずっとじゃないの」


 手すりをアルコールで拭きながら真樹は言った。


「今度はお祖父さんのことじゃなくてな、メタアースの登録方法がわからないとか、お母さんもメタアースに登録しなきゃいけないのに信じてくれないとか、早くしないとこの世界が無くなっちゃうとか」


「あー、そう。あの年齢ですでに終末思想に取り込まれたのね。あたしはそのメタアースのことで悩んでるっていうのに。まあ、子どもの家庭内のことはあたし達の仕事範囲じゃないわ」


 真樹はより一層、手すりを力強く擦った。


「相変わらず冷たい女やな」


「すみませんね、血行が悪くて」


「もうええ、おまえはこのバイト向いてへんわ。うちがひとりで涼太君も彼のお姉さんも助けたる」


「ちょい待ち。お姉さんって誰よ?」


 真樹は拭き掃除の手を止め、聖音の方へ視線を向けた。


「そら、話の流れから言って涼太君のお姉さんやろ」


 聖音が答える。


「あの子、一人っ子のはずよ」


「あ、そういえばそうやな」


「そのお姉さんって誰? そのお姉さんって人が涼太君にメタアースや世界が無くなる話を彼に教えたの?」


「涼太君は……、確かに『お姉ちゃんが言ってた』って言うとったな」


 聖音も涼太の発言の不可解さに気付いたようだった。

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