第61話.女王の反抗③

 ケロッキーに脳内を貸せと言われた鏡原かがみはらみゆりは、その言葉が何を意味するのか理解できていなかったが、とにかく全身が悪しき予感に襲われた為、反射的に「え、待って、そんなの嫌なんだけど!」と声を荒らげた。


「そんな怖がることないっすよ。別に命を取ろうって言ってるわけじゃないし。このメタアースの世界を現実の世界とシンクロさせるだけじゃなく完全に入れ替えるには、人の想像力、世界を変えたいって強い思いが必要なんすよ。それも今のこの現実をいとう人間の思いが。そんな人間を探してる時に見つけたのがみゆりなんす」


 確かにみゆりは18年間の人生ですでに投げやりだった。


 この現実から逃げ出したかった。


 だが、つまらない世界を変えようとまで大それたことを考えていたわけではない。


 いざ、自分がケロッキーの望む世界創世に加担するのかと思うと怖気づいてしまう。


 かと言って、ここで拒否したところで、この見た目に反して腹黒いケロッキーから逃れられるような気はしない。


 また存在を知られていた涼太はどうなるのか、といった思いが頭を過ぎる。


「……ど、どうすればいいの?」


 恐る恐るみゆりは訊く。


「なぁに、ボクが開発したこの特殊なヘッドギアを被り、暫くの間、メタアースの世界に入り浸ってこれが現実だと強く念じてくれればいいんす。それこそ、新世界の女王の証!」


 ケロッキーはウインクしながら、力強くサムズアップする。


「……そんなんでいいんだ。わかったよ」


 破れかぶれなみゆりは二つ返事で答えた。


「でもそんなんでメタアースの世界が現実になるなんて信じられないけど」


 みゆりは懐疑的な台詞も付け加えた。


「ねぇ、みゆり。世界の成り立ちって何だかわかるっすか?」


 ケロッキーはニヤつきながらみゆりに尋ねてきた。

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