第60話.女王の反抗②

 家出した自分を取り敢えずは救ってくれたこのケロッキーと名乗る人物が、どうも善意の者ではなく己の野望の為に自分を利用としていることに、今更ながらに鏡原かがみはらみゆりは危機感を覚えた。


 その危機が何かはわからない。


 だが、何か良くないことが起こるのではないかという不安に襲われる。


「知ってたの……? 涼太をここに連れてきたこと?」


 みゆりは顔から血の気が引くのを感じた。


「当たり前じゃないすか。ボクはIT技術とかそーいうののプロっすよ。みゆりの行動なんて、監視カメラで筒抜けっすよ。このリビングからシャワー室、トイレまで」


 ケロッキーがニヤリと笑う。


「じゃ、じゃあ、わたしのしてること、知らないうちに全部盗撮されてたんだ。プライバシーなんて無かったわけね。それって……、マジ、サイテー。でも、何で今まで涼太を連れてきてたこと、黙って知らないふりしてたの?」


 みゆりは眉間に皺を寄せて訊く。


「人の弱みっていうのは、切り札にもなるんだから、集めて取っておくものっすよ。頭が悪いみゆりも覚えておいたら良いっす。さて、ここに連れ込んだその涼太とかいう少年が無事でいて欲しいのなら、ボクのいうことを聞いて欲しいっす」


「ここに来てから束縛されて、もう言いなりにさせられてるようなもんだけどね」


 みゆりは怒気を込め、ケロッキーを睨みつける。


「別に悪いことじゃないっすよ。いよいよ本格的に理想の新世界の創世を始めるんすから。みゆりが可愛がってる少年もこんな酷い世界から楽しい世界へ行けるんだから、彼のためにもなるっすよ」


 ケロッキーが笑う。


「はいはい、それでわたしは何をすればいいわけ?」


 みゆりが投げやりに訊いた。


 その質問に対してケロッキーが答える。


「なーに、大したことじゃないっす。みゆりの脳内を貸して欲しいんすよ」

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