第55話.児童館での推察①

 福地聖音ふくちきよねは、敵対する夢城真樹ゆめしろまきと児童館で共に働いているが、そこにやってくる子供達の中で身内に不幸が起こる子の数が増えてきていた。


 悲しむ子供を見るたびに聖音は胸を痛める。


 だがそんな聖音と対照的に、真樹は普段どおりに子供達とも接してケラケラと笑っていた。


 そんな真樹の姿勢や態度が聖音には気に食わない。


「ほんまにお前は根っからの悪魔やな」


 聖音は真樹の目を見ずに皮肉っぽく言った。


「はぁ? 悪魔って人間が勝手につけた呼び名よ。本当はあたしこそ天使って呼ばれるべき存在よ♪」


 真樹は笑顔でくるくるとターンをする。


「何が天使や。うちがほんまにお前が悪魔っていうことをあっさり証明したるわ」


「ほうほう、どうやって?」


 真樹は腕組みをし、不敵な笑みを浮かべて聖音を見ている。


「はっ、そんなの簡単や。エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり! いでよ、油すまし女!」


 聖音は真樹を力強く指さす。


「いっひっひ! 呼んだかえ? あたしが第百三十五使徒、油すまし女じゃよ! ……って、こらーっ! 何をやらせるのよ!」


 真樹が聖音を怒鳴りつける。


「ほら見てみ。この呪文に反応するってことは悪魔やないか」


 聖音はフンと鼻を鳴らす。


「アンタが可哀想だからノってあげただけよ。だいたいこんな可愛いあたしを指して油すまし女だなんてセンスなさ過ぎだわ」


 真樹も同じくフンと鼻を鳴らす。


「いまどき語尾に『だわ』なんてつけるの、オバサン構文って言われてオバサンの証拠なんやで」


 聖音が馬鹿にするように言った。


「はあ!? このあたしのどこがオバサンなのよ!」


「じゃあ、お前、いまいったい何歳やねん?」


 聖音が訊いた。


「えーっと、キリストが誕生してから二千年以上は経ってるから……、あたしはもっと前に……」


「やっぱりオバサンや!」


「うるさい!」


 真樹は再度、怒鳴る。


「うちの勝ちやな」


「どこが勝ちよ。アンタの相手をしてるとストレスが水につけた乾燥わかめのように増えるわね。帰ったらメタアースでモンスター狩りして、アンタをボコボコにしてる気分に浸りたいわ」


 真樹が吐き捨てるように言う。


「メタアースのモンスター狩り? そういや百瀬ももせも面白い言うてたな。モンスター倒してケロコインとかいうのを貯めるって。それで色んな武器があって、それでやっつけるのが快感って……」


 そこまで言って、聖音は何かを思い出したように、ふいに顔を上げた。


「なあ、そのメタアースのことなんやけどな」


「何よ?」


「そこでのモンスター狩りって、どんな武器があった?」


 聖音は真顔で真樹に訊いた。

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