第54話.女王の君臨⑥

 鏡原かがみはらみゆりの頭の中に、先程メタアースの住人との会話の中で耳にした、メタアースの世界が現実になるという言葉が蘇った。


(もしかしてもう現実とリンクし始めてる? 現実になるってまさか……?)


 珍しく自分の体に冷や汗が流れているのを感じた。


 みゆりの頭に浮かんだ悪い予感。


 それはここでモンスターを狩ると、現実の世界でメタアースに否定的、もしくは理解ができず登録していない人が狩られるというのか。


 まさかそんな非現実的なことがあるわけがない。


 そもそもどうやって現実に生きている人と仮想世界のモンスターを繋げるのか。


(もしかしてケロッキーがそんな技術を開発したとか……!?)


 自分があり得ないと思っていても、ケロッキーならあり得るのか、などという可能性が頭をよぎる。


 もしそれが事実なら。


 みゆりはハッと、メタアース用のゴーグルの中で目を見開いた。


(まさか、涼太のおじいちゃんは……)


 身体の芯が凍るような感覚に襲われる。


 みゆりのこの不穏な予感が当たっているとするならば、涼太の祖父は自分が女王として君臨しているメタアースに殺されたことになる。


 しかも涼太は縄跳びを使い自分の首を絞めていた。


 死に方が絞殺だとするならば、自分の鞭で倒したモンスターの中のどれかが涼太の祖父だった可能性もある。


(まさか……わたしが!? って、そんなことあるわけない……!)


 ぼーっと突っ立って思案しているみゆりに「ヒミコ、どうしたの?」と周りのメタアースの住人が心配そうに声を掛ける。


「あっ、えっと、その、別になんでもない……」


 憂いを頭の中に残しながらも、みゆりはそんなことがあるわけないとメタアースに没頭しようと思った。


 たとえ自分が涼太の祖父を殺めた可能性があるとしても。

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