第51話.女王の君臨③
リアルの世界が消えてメタアースの世界で人は生きる。
メタアースの住人にそう言われて、
「えっ、どういうこと? 言ってる意味わかんないんだけど??」
頭が混乱するみゆりはヘッドギアを外し、隣にいるケロッキーに尋ねた。
「言葉の意味どおりっすよ。このメタアースがリアルの世界になるっす」
ケロッキーは慌てる様子も無く平然と答えた。
「リアルの世界になるって、生きてる人がみんながメタアースに登録して、ここで仕事したり買い物とかするってこと? これからメタアースで色々できるってことでしょ? それは知ってるけど?」
みゆりは自分なりに解釈しようとする。
「違うっすよ。今の現実が消えてメタアースが現実になるんす。そしてそこで人間達は生活するっす。人が生きてゆく世界の次元が変わるんすよ。そしてそこでみゆりが女王になるっす」
ケロッキーの目が光った気がした。
「はあ? ますます言ってる意味がわかんない。そこまでの話、聞いてないし。だいたい、そんなの不可能じゃん」
みゆりは眉を
「不可能じゃないっすよ。みゆりの思いがあればね」
「わたしの思い?」
「みゆりって若くしてこの世界にうんざりしてるじゃないっすか。別に死んでもいいと思ってる。このゴミみたいな不公平な世界が気に入らない。その思いがあればこそ、この仮想世界を現実にできるんす」
ケロッキーの口の端が笑っていた。
「確かににいまの世の中は嫌いだけど……、でもわたしにそんなちからがあるわけないじゃん。何言ってんの?」
みゆりは何だか馬鹿にされたようで腹が立ってきた。
「みゆりの思いがあれば、それを可能にしてくれるんっすよ、天帝がね」
「なに、テンテーって? わたし難しいことわかんないんだけど」
少しきつめの口調でみゆりは尋ねる。
「この世界をお創りになった偉大な存在っす。まあ、それはおいおいわかるから、女王としてメタアースを続けて」
嫌らしい笑みを浮かべながら語るケロッキーに対し、みゆりの中に不信感が芽生えた。
確かに自暴自棄になってケロッキーを頼ったのはみゆり自身だ。
そしてこの世界が嫌だったのも事実。
ケロッキーが言ったみゆりに関することは正しい。
だが、みゆりは自分が何か大きな企みに利用されようとしているようで、何故か良い気分はしなかった。
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