第50話.女王の君臨②

 ケロッキーに促され、鏡原かがみはらみゆりは渋々メタアースのヘッドギアを被る。


 彼女の目の前に現れたのは、ピンクを基調とした空間。


 壁には大量の金色のコインが流れる映像。


 ここはメタアースの両替所だ。


 メタアースのユーザーがリアルマネーをケロコインに替える場所である。


 確かにケロッキーの言うとおり、メタアース内の人の数が増えているような気がした。


「あれ? もしかしてヒミコ!?」


 換金所に来ていた男が声を上げる。


 ヒミコとはメタアースでのみゆりのハンドルネーム。


「あっ、ヒミコ様だ!」

「マジ? 本物のヒミコ来た!」


 ここに集まってきている人達が次々にみゆりを見て、興奮し騒いでいる。


 みゆりは周囲の人達の様子に戸惑った。


「ヒミコのアバター可愛い!」


 換金所に来ていた女性のアバターが声を上げた。


 可愛いと言われて驚きながらもみゆりは反射的に照れる。


「えっ、ちょっと待って、何でみんな騒いでんの!?」


 みゆりはなんとか口を開いた。


「だってメタアースの女王に会えたんだから、みんな驚くでしょ!」


 一人の男性が笑いながら答えてくれた。


「えっ!? 女王って言ったって、わたし何にもしてないよ??」


 みゆりはますます戸惑う。


「そんなことないよ。換金所の管理とかしてくれてるし。それにメタアースの象徴だしさ」


 男性のアバターが答えた。


「メタアースって超楽しい! わたし達もヒミコと一緒にこの世界を盛り上げいくから!」


 女性の声でサロペットを着たウサギのアバターが言った。


 人を嫌い、社会に反感を抱いてきたみゆり。


 アイドルのように周りが自分に注目してくる状況は、鬱陶しく煩わしい反面、何故か嬉しさような快感も芽生えていた。


 しかし、このメタアースの住人に女王としてどう接すればいいのかわからず、みゆりは困惑する。


 そんな戸惑っているみゆりに一人の青年のアバターが言った。


「これからリアル世界は消えて、このメタアースが新たな生きる場所になるんですよね!?」

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