第47話.愛を信じる者の高揚
突然死事件が世間を震撼させているせいか、仮想世界メタアースで
「明日のわからない今の世の中の不安から、メタアース内の唯一の宗教として多くの人の心の拠り所となっております、マザー舞」
「それは素晴らしいことですね、ブラザー純真。多くの人が不安な日々の中でわたし達の愛の新世界を求めているのです。なので一刻も早く新世界創世を成し遂げなければなりません。わかりますか、シスター小咲芽」
舞は
「はい、わかります、マザー舞。それを多くの信者の方が望んでいる証拠に、皆様のお布施の額も増えていっております。またメタアース内にいる愛の新世界の信者には、一人も突然死事件に巻き込まれている人はおりません。皆、マザー舞の愛のおかげだと口を揃えて感謝しております」
小咲芽が真剣な眼差しで答える。
「それは素晴らしいことです! わたし達を信仰すれば突然死事件に巻き込まれないという事実は、さらに信者を増やすアピールポイントとなりますね」
舞は満面の笑みを見せた。
「やはり愛には力があるのですね。マザー舞を愛して……僕は正解でした」
純真が微かに目を潤ませる。
「ブラザー純真、ありがとう。気弱な一介の大学生だったわたしがここまでなれたのも、皆さんの愛のお陰でもあります。でもわたし達にはまだまだやるべきことはありますよ。では今日も信者の皆様に森へ行ってモンスター狩りをして、お金を稼いでいただくことにしましょう。もっとケロコインを集めて、そしてメタアースでの活動の輪を広げるのです」
舞は優しく語りかける。
「それに加えて、いまリアルの世界で起きている突然死事件をマザー舞が解決するというのはいかがでしょう? そうすればますます愛の新世界への信仰は篤くなり、信者の数も増えることと思われますが」
純真が提案した。
「それはよいことです。ですが具体的にどうするのですか?」
「信者の皆さんに少しでもいいから情報を集めてもらいましょう。何か手掛かりは掴めるはず」
「それは良いですね。それでは信者の皆さんにはわたしからの言葉としてお伝えしましょう。特に解決に繋がる有力な情報を知らせてくれた方には、愛の新世界が創世された暁には司教の地位を授けると」
舞がそう言うと、小咲芽が舞の血を数滴混ぜた水を三つのグラスに注いだ。
三人は透明なグラスを軽く合わせ乾杯すると、それぞれ口をつけた。
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