第43話.女王の約束⑤
恐らくモンスターを鞭による絞殺で倒したことで、涼太の祖父が亡くなった時のことを思い出したのであろう。
別に自分のせいじゃないし、とみゆりは思う反面、やはり自分の迂闊さで涼太に可哀想なことを思い出させた、という感情も湧いてくる。
その感情から逃れたい為か、
「うん、空いた!」
涼太は一瞬、笑顔に戻り返事をする。
「じゃ、パンケーキ作ろっか?」
みゆりは涼太に言った。
「お姉ちゃん、作れるの?」
「んー、まぁ、なんとか」
みゆりは一応エプロンをつけて、涼太と二人でキッチンでおやつのパンケーキ作りを始めた。
ボウルに卵と牛乳を入れ、手際よくかき混ぜる。
続けて、ホッケーキミックスを加えさらにかき混ぜた。
「お姉ちゃん、上手だね!」
そば見ている涼太がぴょんぴょん飛び跳ねがながら言う。
「わたしも他人のためになんか作るのって、初めてなんだけど」
みゆりが涼太の為にパンケーキを作る。
兄弟姉妹も居らず、また親からも見放されていたような自分にとって、このような家族の関係に憧れていたのかもしれない、そんなことをみゆりは思った。
「じゃ、焼くよ」
「うん!」
熱したフライパンで生地を焼いて、みゆりは二人分のパンケーキを完成させた。
「さっ、食べよ」
ハチミツをかけて、みゆりと涼太、二人で食べる。
「美味しいよ!」
涼太が叫ぶ。
「そう? なら良かったけど」
涼太もメタアースのモンスター狩りで失った笑顔を取り戻してくれた。
みゆりにとっても涼太と過ごす時間は、安らぎと楽しさを兼ね備えた時間だった。
だが、ここはみゆりの家ではない。
いつかはケロッキーが帰ってくる。
この地下空間に涼太を連れ込んでいるところを見られたら自分も追い出されるかもしれない。
「ねぇ、涼太、パンケーキ食べ終わったら帰ろっか。ママも心配すると思うし」
みゆりは言った。
「んー、うん」
涼太はパンケーキを頬張りながら頷いた。
「またお姉ちゃん、遊んでくれる?」
涼太が訊いた。
みゆりの顔に思わず笑みが溢れる。
「当たり前じゃん。また遊ぼ」
みゆりは即答した。
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