第35話.公園の少年③

 何故、死んでもいいと思ってるのか、公園で出会った少年に訊かれた鏡原かがみはらみゆりは、思わず乾いた笑いを漏らした。


「うん? 何でかって、まあ、何て言うか……、生きてるのがつまらないから?」


 みゆりはぶっきらぼうに答えた。


「学校で友達と遊ばないの? 家でゲームとかしないの?」


 少年は更に質問を続ける。


「あたし、学校行ってないし。ってか、いま家出中なんだ」


 少年は少し驚いた顔をした。


「お姉ちゃん、家出してるんだ。家族の人は何も言わないの?」


「全然。あたし、君みたいに大切な家族とかいないから」


「えっ、お姉ちゃんはおじいちゃんとかいないの?」


「顔も見たことがない」


「お母さんは好きじゃないの?」


「この世で一番嫌い」


 そう断言したみゆりに、少年は自分と違うみゆりに対し、明らかに困惑している様子だった。


「そうなんだ。お姉ちゃんも寂しいんだね」


 そう言って、少年が寂しげな表情を見せる。


 みゆりは彼を悲しませてしまったようで、少し申し訳ない気分になった。


「あ、でもさ、いまはちょっとハマってるのがあるから、死ぬ気は薄れてるかな。メタアースって仮想世界なんだけどさ」


「メタアース?」


「知ってる?」


「聞いたことはある」


「メタアースじゃ、モンスター狩ったり、買い物したり、ライブ観たりって色々できるし。そこでは、もう一人の別の自分になれて現実忘れられるから。超楽しいよ」


「そうなんだ。僕もやってみたい」


「君、スマホ持ってる?」


 みゆりが訊くと少年は慌てた感じでスマホを取り出した。


「連絡先交換しよっか。今度、わたしがさ、メタアースの世界へ連れてってあげるよ」


 みゆりはケロッキーに断りなく、安請け合いをしてしまった。


「いいの?」


「うん。メタアースで遊んでたらおじいちゃんが亡くなった悲しさも忘れられるよ。君、名前は?」


「涼太。高梨涼太たかなしりょうた


「涼太くんね。あたしは鏡原みゆり。よろしく」


 何気なく出会った少年と、みゆりは成り行きで連絡先を交換することになった。

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