第33話.公園の少年①

 鏡原かがみはらみゆりは家出をしてケロッキーのいる廃工場をねぐらにしているわけだが、ケロッキーが提示したここに居着いても良い条件というのが、不必要な外出をするなというものだった。


 しかし、若い活動的な女子がずっと廃工場に引き籠っているというのは流石に退屈で、やがては限界が来る。


 みゆりはケロッキーが夜まで留守をすると出掛けて行ったその日に禁を破り、一人外出した。


 ただ、とりあえず外に出てみたものの、彼女には特に行く先のあてはない。


 それに持ち合わせの金も少額しか無い。


(メタアースでモンスターを狩ってお金を手に入れてるけど、ケロコインに変えてばっかで、リアルで使えるお金なくて困るんだけど。ケロッキーに相談しよ)


 ショッピングをしようにも金が無く、しかもあまり遠出をしたり街中を彷徨うろいたりして、知り合いに見られても面倒なことになる。


 仕方がないので廃工場の近辺を散策することにした。


 この付近は本当に何も無い地域なので、今まで訪れたことがなく景色自体は新鮮だ。


 みゆりがブラブラとあてもなく歩いていると、やがて小さな公園を見つけた。


 公園の中では近所の子どもだろうか、幼女が二人、並んでブランコに乗って遊んでいる。


 木製のベンチが空いていたので、歩くのがだるくなったみゆりは、そこで休憩することにした。


 人目もはばからず大きな欠伸あくびをする。


 目を擦ってからみゆりが辺りを見渡すと、少し離れたベンチに少年が一人、うつむいて座っていた。


 彼の手には縄跳びが握られているように見える。


(もしかしてあの子もわたしと同じでぼっちとか?)


 辺りには友達らしき人間もおらず、また縄跳びで遊ぶわけでもなく、ただ独り公園で俯いている少年というのはなんだか不自然で違和感がある。


 だがそんなことはみゆりには関係ないことだった。


 みゆりはポケットからスマートフォンを取り出す。


 彼は自分には関係ない。


 そう思っているにもかかわらず、何故かみゆりはその少年が気になるようで、つい彼のいるベンチの方へと視線を向けてしまう。


 その少年を気にして、どのくらい経っただろうか。


 みゆりはスマホと少年を交互に見ながら時間を潰していたが、やがて黙ってじっとしていた少年が、なにやらアクションを起こした。


 彼は手に持った縄跳びを、自身の首に巻きつけ始めたのだ。

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