第31話.悪魔の三人①

 悪魔である夢城真樹ゆめしろまきは児童館でのバイトを終え、コンビニでエクレアとコーヒー牛乳を買い、アジトであるサバト人生相談所へと戻ってきた。


「ただいまー。あら、莉沙りさ先輩」


 部屋の中には悪魔の先導者、緑門莉沙りょくもんりさがいた。


「おつかれ」


 ソファーに座っている莉沙が真樹を見て挨拶をする。


「ここに来るなんて珍しいですわね。今日は何のご用で?」


 真樹は訊いた。


「いや、別に……。たまたま近くに来たから寄っただけ」


 莉沙は真樹から視線を逸らして言った。


「まあまあ、それはようこそいらっしゃい。せっかくだから、ゆっくりしていってくださいですわ。いまコーヒー牛乳入れますから。あ、エクレアも10個買ってきたから、一つだけなら食べていいですわよ」


「あ、ありがとう……」


 相談所内には所長である贄村囚にえむらしゅうもいるのだが、彼はパソコンを操作しているだけで、特に莉沙との間に会話は無い様子だ。


 真樹は普段と違う室内を奇異に思いながらも、カップに注いだコーヒー牛乳を「どうぞ」と、莉沙の前に置いた。


「どうも」


 軽く頭を下げる莉沙も普段見知る姿と違い、若干緊張しているように見える。


「あっそうそう、そう言えばあたしの働いてる児童館なんですけどね」


 エクレアの袋を破り、真樹から莉沙に話しかけた。


「バイト、どう?」


「実はそこはあの髪にパーマかけて頭が焼きそばみたいな、焦げた縮れ麺みたいな福地聖音ふくちきよねも働いててね」


「福地聖音って……、あの真樹ちゃんのライバルの神様の子?」


「神様というより、ペテン師、偽善者という方が正しい奴ですが……、とにかくそいつですわ。奴と同じところで働いて、あたしの方が優れていることを見せつけてやろうと思ったわけでして」


「嫌いな人と一緒に働くなんてやりにくくない?」


「別に。むしろ燃えてきますわ。ま、ちょっとこの間の紙芝居勝負では、あたしの作品が斬新で前衛的だったせいで、周りから理解されず負けたことになってますが……」


「えっ? あっ、そう……」


 真樹の話がよくわからないようで、莉沙は苦笑いを浮かべていた。


「まぁ、おいおいあたしと焼きそばとの能力の違いを見せつけてやりますわよ」


 そう言って真樹はコーヒー牛乳の入ったカップに口をつける。


「そう言えば、あの神様側の……、福地聖音だっけ? その子も同じ大学だったよね」


「そうですわ。天帝の仕組んだ終末のせいで、あたし達はこの世界を消すためにあの大学に集められてたんですわ」


「そうだったね。まいだってわたし達と同じなんだよね」


「あっ、そう言えば舞ちゃん、学校でも見かけないけど元気なんですかね?」


 真樹が莉沙に、同じ悪魔の先導者である天象舞てんしょうまいについて訊いた。


「知らない。実はわたしも舞とはもう会ってないし連絡も取ってないから……」


 莉沙が答える。


「……その舞だが、仮想世界で勝手なことを始めているようだ……」


 ずっと無言だった贄村が、パソコンを眺めながら二人の会話に割って入った。

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