第24話.幼稚な争い①
敵対する
「きよねせんせー、描いた絵見て〜」
女児が聖音に話しかける。
「うわぁ、りっちゃん上手やね! アニメの絵にも負けてへんで。この女の子なんかすごい可愛く描けてるやん!」
「うん、女の子かわいく描けた!」
「りっちゃんは将来は漫画家さんかな?」
「うん、わたし漫画家になりたい!」
子どもは満面の笑みだ。
その笑顔を見た聖音はチラッと真樹の方を一瞥し、
彼女達の様子を見て、真樹は眉間に皺を寄せ忌々しい表情をする。
そんな真樹にも別の女児が話しかけてきた。
「まきせんせー、わたしの描いた絵見て〜」
「まぁ、みさきちゃん上手な絵ね! カンディンスキーの抽象画にも負けてないわよ。このタヌキなんてすごく可愛く描けてるわ」
「せんせー、それ、ねこ!」
「そう、これは猫ね。みさきちゃんは将来は銭湯絵師さんかな?」
「なぁに、それ?」
首を傾げる子どもを見た真樹は、額に脂汗を滲ませながらチラッと聖音を一瞥し、作り笑いを浮かべた。
その時の意地が悪そうな聖音の嘲笑に、真樹は一層怒りを
「聖音さん、真樹さん」
人の知らないところで勝手に競い合っている二人に、先輩指導員が声をかけてきた。
「はい、何でしょう?」
二人で声を揃え返事をする。
「お二人にお願いがあるんだけど。子ども達に紙芝居を作ってあげてもらいたいのよ」
「紙芝居……、ですか?」
聖音が訊く。
「新しく入った指導員が子ども達と距離を縮めるには良いじゃない? お二人が物語を話して聞かせてあげたら、きっと子ども達が喜ぶと思うの。お願いしていいかしら?」
先輩の指示に聖音は笑顔で頷いた。
「任せてください! きっと子ども達が喜ぶものを作ってみせます。まあ、どっちの紙芝居が喜んでもらえるか、もう答えは出てるようなものですけど」
聖音はニヤつきながら真樹へと視線を送る。
「そのとおり。もう答えは出てるようなものですわね」
真樹もニヤつきながら聖音へと視線を送る。
「わかりやすくて子ども達が楽しめるお話がいいわね。明日にでも来てる子達に向けてお話し会をしましょう。じゃ、お二人任せたわよ」
先輩は紙芝居制作を依頼すると、笑顔で去っていった。
「紙芝居で決着がつきそうやな。子どもは純真な心でどっちが優れてるか本物を見抜く目があるからな。クソ悪魔」
聖音が腕を組む。
「まったく。神がいかにずる賢い悪党か、紙芝居で子ども達にあなたの本質が見透かされるわね。スットコ偽善者」
真樹も腕を組んだ。
二人は顔では笑いながらも互いに視線をぶつけ合っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます