第15話.因縁の児童館
そして本日は、初出勤の日である。
ここは真樹のライバルである
児童館には、学校を終えた子ども達が徐々に来館していた。
「福地さん、こちら今日から新しくアルバイトされる方です。よろしくお願いしますね」
施設長が子どもの相手をしている聖音に声をかける。
「あっ、はじめまして! よろしくお願いしま……」
笑顔でそこまで言いかけた聖音は本人を見て目を丸くした。
「お前は……!! 夢城真樹!!」
聖音は叫びに近い声を出した。
真樹も真似をして目を見開き、大声で言う。
「お前は……!! アラビアの怪人ザ・シーク!!」
「お前、わざと間違えてるやろ!!」
聖音は更に声量を上げた。
「ちょ、ちょっと、福地さん。子どもの前であまり大声を出さないで……」
施設長は困惑している。
「あっ、すっ、すみません!」
聖音は慌てて頭を下げた。
「でっ、でも施設長! よりよってなんでこんな奴を採用したんですか?」
聖音は続けて施設長に尋ねた。
「まあ、お二人はお知り合いだったの? 夢城さんはね今は大学生でね、昔から子どもが好きで、子どもに関われる仕事をしたいってずっと探してらっしゃったんですって」
施設長が説明する。
「そーなんです。あたし、本当に子どもが大好きで、子ども達の無垢な心と純真な瞳に触れてると、自分の心まで綺麗になるようですわ」
真樹が答えた。
「施設長、騙されてはいけません。こいつは子どもを可愛がるどころか、泣いてる子がいると、やかましい、通行の邪魔だ、どけ!と蹴るタイプの女です」
聖音は真樹を指さしながら施設長に訴える。
「まあ、なんて酷いことをおっしゃる方。こんな初日から他人を悪く言うような人が児童館で働いているなんて、子ども達が可哀想ですわ」
そう言って真樹は、右手で聖音を指さしながら、左の服の袖で目頭を押さえた。
「ま、まあ、お二人がどういう関係かは存じないけど、仕事の上では仲良くね」
施設長は困惑しながら作り笑いを浮かべ、「とりあえず福地さん、夢城さんに仕事を教えてあげてね」と後を聖音に任せて、その場を離れた。
「……わざわざうちの働いてるところにまで嫌がらせにくるなんて、さすが性根まで腐敗した悪魔やな。このトンチキ」
聖音が睨みながら真樹に言う。
「アンタとあたし、どっちが優れているか仕事で決着をつける時がきたわね。このスットコドッコイ」
真樹は腕組みをして、聖音に向け不敵な笑みを浮かべてやった。
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