第12話.様変わりの再会②
ふらりと現れた
「ほら、なぜか政府の人が会見で、わたし達、奇能持ってる先導者を警察って呼んだでしょ。そのせいでさ、困ってる人達が助けて欲しいってわたしに頼みにくるのよ」
「それで幅広い年齢層の人があなたのライブを観に来てたわけね」
「助けを求めに来た人を救ってあげたいのはやまやまだけど、わたしも全ての人を助けられるわけじゃないからさ。とりあえずお話聞いて、きよねっちのサクラメント人生相談所の連絡先を教えてるんだけど……」
「まあ」
「ただ、ライブに人が集まってくれるのは嬉しいけど、これはわたしのアイドルとしての人気で集まってきてるわけじゃないからさ、それでちょっと困惑してて……」
「それは可哀想ね」
「まさか、アンタ達、悪魔の仕業じゃないでしょうね? わたし達を困らせる為に政府に言わせて……」
「まあ! とんでもない濡れ衣だわ。うちにも奇能持ってる人いるのよ。
「ほんとぉ?」
百瀬は疑いの目で見ている。
「やってないことをあたしが証明するのは、文字通り悪魔の証明で難しいのよ。でも背理法を用いれば、やってないことの証明もできないこともないこともないこともない……」
「どっちなのよっ!」
「だいたい元はと言えばあなたが人前でカブトムシを出したのが発端じゃないの」
「う……、それはそうだけど……、でもなんで政府の人が……」
百瀬は考え込んでいる。
「まあまあ、それはさておき、せっかく人が集まるようになったんだから、これをチャンスととらえないと。あたしもあなたの人気が復活するように、新曲のアイデアを考えてきてあげたんだから」
真樹は胸を張った。
「へぇ、どんなの?」
「たとえばこれなんてどうかしら?」
真樹はスマホを取り出し、自らが考案した歌詞を記した画面を見せる。
「えーっと……? もっもっもっももせ……、なにこれ?」
「百瀬のズンドコ節」
「嫌だ、歌いたくない」
百瀬はそっぽを向いた。
「あら? じゃあこれはどう? 流行りのアニメソングに乗った曲だから絶対に売れるわよ」
真樹はまたスマホの画面を見せる。
「……音よ、轟け、トイレの向こうへ、……これは?」
「残尿讃歌」
「絶対歌わない! 絶対歌うもんか! 死んでも歌うもんか!」
百瀬は怒りの表情を浮かべる。
「あらそぉ? どうもお気に召さなかったようね」
「そんな歌、お気に召す人がいるわけないでしょうが! まったく! だいたいアンタはなにしにここにきたのよ?」
「実はバイトを探しまわってるのよ」
「前もそんなこと言って街中をさまよってなかった?」
「以前、あなたが紹介してくれたコンカフェで働いてたんだけど爆破されちゃったのよ。あたしって本当に仕事運が無くて」
「大抵はアンタ自身の問題じゃないの? まあひとつだけバイト募集してるところなら、わたし知ってるけど?」
「あら、どこ?」
「この場所から北に歩いて5分のところにある児童館なんだけどね」
「へぇ、ここの近くなのね」
「でも残念ね」
「何が?」
「実はもうそこではきよねっちが働いてるんだよねー。さすがのアンタもきよねっちと一緒に働くのは嫌でしょ?」
百瀬は意地悪く笑う。
だが真樹は「ふっふっふ」と笑い返した。
「まさかアンタ、きよねっちと一緒に働くつもり!?」
「あの焼きそば頭とは、いずれは決着つけなくちゃいけないとは思っていたのよ。今度は仕事で勝負だわ」
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