第11話.様変わりの再会①

 夢城真樹ゆめしろまきは冬の寒空の下、アルバイトの募集を探しがてら、街中を彷徨うろいていた。


(コンビニはクビで、コンカフェは爆破されて、あたしはよほど仕事運がないようね。どこか猫でも働けるような、楽で落ち着いたところはないかしら?)


 あてもなく街をブラブラしていると、聞き覚えのある歌声が、真樹の耳に届く。


 声の方角へ目を向けると、そこには人集りができていた。


 見たところその場所には、老若男女問わず幅広い年齢層の人が集まっているようだ。


 真樹はそちらの方へと足を向ける。


 人垣の隙間から覗くと、皆の視線を集めていたのは、神側の先導者、砌百瀬みぎりももせだった。


 以前、彼女が街角でライブをしていた時は、グループが解散し人気が急落したせいで、観客はまばらだったのだが、今日はこれだけ集客している。


 何があったのだろうか。


 百瀬は歌い終わると「本日はこれで終わりです! お集まりくださりありがとうございました!」と観客に向けて深々と頭を下げた。


 観客達は一斉に拍手をした後、今度は次々に百瀬の前へ行列を作った。


 それぞれ何か頭を下げて百瀬に頼んでいるようだ。


 中には涙を流しながら訴えている人もいる。


 どうせ暇なので、真樹は百瀬とゆっくり話をしようと、行列が落ち着くまで待つことにした。


 とは言え、行列はなかなか止む様子はない。


 一人が百瀬と話し終わっても、また一人が行列に加わるといった感じである。


 結局、真樹は一時間以上、待たされる羽目になった。


 漸く行列が終わり、百瀬が路上ライブの後片付けを始めた頃、「やぁやぁ」と真樹は務めて笑顔で声をかけた。


 百瀬は声を掛けてきた真樹を一瞥し、驚く様子も無く「あぁ……」とため息のような声を漏らした。


「腰かとお思いでしょうが……、いえ、又かとお思いでしょうが」


「はぁ?」


「人類の心の天使、夢城真樹ちゃんです」


 真樹は百瀬に向けてピースを出す。


「どこが天使よ。アンタは悪魔でしょうが」


 百瀬が吐き捨てるように言った。


「ところであなた、今日は観客多かったわね。地道な活動が身を結んで人気が復活してきたのかしら? よかったじゃない」


「……おかげさまでね」


「でもあんなに落ちぶれてたのに、なんで急にファンが大勢集まるほど人気が戻ったのよ? もしかして新曲が超名曲で売れまくったとか?」


 真樹は尋ねる。


「あぁ、そのことね」


 真樹の質問に対して百瀬は眉を落とし、困惑した顔を見せた。

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