第3話.金でできている女③(鏡原みゆり)

「とりあえずどっかお店入るっすか?」


 相手の女子か男子(?)は、わたしにそう言って、フーセンガムを膨らませた。


 髪型がボーイッシュで自分を「ボク」って呼ぶから男の子とも思うけど、でもファッションと声はどう見ても女の子。


 っていうか、マジでこの同い年ぐらいの子が今日の相手?


 そもそもお金持ってる?


 どうすればいいのかわからないけど、約束だとデートするだけなので、相手が同年代であってもお金がもらえるのなら、それを果たそうと思う。


「えっと、今日はほんとにデートだけでいいの?」


 つい相手の子に確認してしまった。


「イェース! それで十分っすよ」


 なんか陽キャのノリ。


「……デート代、全部出してもらうけど?」


「オッフコース! じゃまずはどこかのお店へGOっす! ところで君は何が食べたいっすか?」


 そう相手が聞いてきたけど、わたしは特に食べたいものなんか決めてなかった。


 それに相手はグレーのパーカーにデニムのショートパンツ。


 見た目からは、そんな高級なお店とか行ける服装じゃない。


「ファミレスとかならいっぱいメニューあるから」


 ファミレスならメニューが豊富だから、何かわたしの食べたいものが見つかるだろう。


「そんな安いとこでいいっすか?」


 は? 高価なお店に行けるほどお金持ってんの?


「……うん。そこでいい」


 わたしが頷くと、相手の子はテンション高いノリで「よっし、ファミレスなら駅の近くにあるからすぐっすね。それじゃレッツゴー!!」と右腕を突き上げた。


 こうしてわたしはフーセンガムを膨らませながら歩く不思議な子に連れられて、駅近くのファミレスへと二人で向かった。

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