第2話.金でできている女②(鏡原みゆり)

 わたしのSNSにまたコンタクトがあった。


 いつもどおり相手の要求を聞く。


 とりあえず会ってデートするだけでいいらしい。


 それでも後からいろいろ要求してくる人はいるけど。


 でもそれはそれで構わない。


 お金になるし、それに危険な目に遭ったとしてもわたしは受け入れる。


 なぜなら別に死んでもいいと思ってるから。


 わたしの価値のないゴミみたいな18年間、この世界から消えたところで影響ない。


 悲しむ人もいない。


 ママがとりあえず悲しむかもだけど、それはそれでむしろ快感だ。


 約束の日、指定された駅で待った。


 わたしはグレーのコートに黒のスキニーパンツで行くと伝えた。


 駅の中央口の向かって右側の柱のところにいると。


 学校の制服を持ってきて欲しいと言われなかったのはありがたい。


 制服は、あまりしわにしたり汚したりしたくない。


 相手の服装は教えてくれなかった。


 だから人波を見ていても、どの人が今日の相手なのかわからない。


 もうすぐ約束の時刻だけど、それらしい男性は現れなかった。


 ドタキャンかな。


 もし時間になっても来なかったら帰るつもりだ。


 いつ来るかわからない相手を待つなんて無駄なことしたくない。


 代わりの相手なんていくらでもいる。


 一応、スマホをチェックした。


 もしかして遅れるか何かの連絡が来てるかもしれない。


 わたしの近くで、わたしと同じように立ってる女の子がこっちを見ている。


 髪がショートカットの、グレーのパーカーを着た女の子。


 年齢は同い年ぐらい?


 彼女もパパ活女子?


 まさかね。


 それにしてもあまりこっちを見られると良い気がしない。


 何か怪しまれてるのかも。


 別にいいけど。


 相手とのやりとりに使っているSNSには何も連絡は来ていなかった。


 スマホの時計が約束の時間になる。


 相手の男性は来なかった。


 スマホをバッグにしまい、わたしが帰ろうと思ったとき、


「君がボクと会う約束した人っすか?」


 って、隣の女の子がガムを噛みながら声をかけてきた。


 えっ、まさかこの女の子が今日の相手?


 いやっ、いまボクって言ったから、もしかして男の子だった?


 こんな若い子がパパ活の相手?


 ええーっ!?

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