第36話.病室での会話①
用件は
真樹は神の連中の命令に従う必要など全くないうえに、百瀬の体調など自分には知ったことではないのだが、彼女に関することで聖音達に問い質したいことがあったので、とりあえずバイト先の爆破騒動から着替える間も無しに、コンセプトカフェの制服であるエルフメイドの格好のまま病院へと向かった。
「すみません! 砌百瀬というアイドル崩れの女の子が入院しているはずなのですが何号室ですか?」
真樹は受付で尋ねる。
「ご面会ですね。砌さんの身内の方ですか」
受付の女性がパソコンで調べ始めた。
「身内のような身外のような者ですわ」
「砌さんなら555号室です」
「マッハゴーゴーゴーと覚えればいいですわね。ありがとうございます!」
部屋番号を聞くなり、真樹は555号室へと向かった。
「ちょっと何の用なのよ!?」
真樹は部屋に辿り着くなり、院内だというのもお構いなく勢いよく扉を開けた。
「真樹、来たか……って、なんやねん! その格好!」
聖音は真樹の姿を見るなり、眉間に皺を寄せた。
「仕方ないじゃないの。こっちはバイト中に人質に取られたうえにお店が爆破されそうになって大変だったのに。せっかく落ち着いたと思ったら急に来いだなんて呼び出して。つまんない用だとキレて暴れるわよ」
真樹は腰に手を当て、頬を膨らませた。
「……見ぃや」
聖音がベッドを指さす。
「あっ、百瀬ちゃん! あなたにも聞きたいことが……、まあ、気持ちよさそうに寝ちゃって!」
真樹の目の先には頭にネット包帯を被り、身動きひとつせずベッドで眠っている百瀬だった。
「アンタがやったんやろ?」
「は?」
「アンタら悪魔が百瀬を酷い目に遭わせたんやろ!」
聖音は場所が病室だということも忘れ、声を荒らげた。
「まあ、ウェットドレスね」
「なんやねん、それ?」
「濡れ衣を着た」
「こんなときに冗談言うなんて、やっぱりオマエが犯人や!」
「ぎゃー、こんな時でもギャグを言ってしまうこの体質が恨めしいー!」
真樹が嘆く。
「絶対に許さへん! オマエだけは必ず粛清する! 病院の外出ぇや!」
聖音は目に涙を浮かべながら、憤怒の表情で真樹を睨みつけた。
「まあまあ、落ち着きなさい。この衣装を見てもらってわかる通り、あたしはカフェでバイトしてて、それで変な連中に襲われてたのよ。百瀬ちゃんが襲われたのはいつ頃?」
真樹は聖音に訊いた。
「三時間ほど前らしいけど……」
「なら、その時間はあたしは間違いなくバイト中ね。証人もいるわよ。それにね、百瀬ちゃんでしょう、これ。この件について彼女に聞きたかったんだけど、もしかしてこれがこの怪我に繋がったんじゃないの? いまネットで騒ぎになってるわよ」
そう言って真樹はスマホをスカートのポケットから取り出し操作すると、画面を聖音に見せた。
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