第12話.愛の同志①
しばらくは舞の配信や、他のメンバーと舞とのやり取り、メンバー同士のチャットなどを視聴しているだけで、メンバー達と交流してはいなかった。
あまりこう言うものに参加した経験がなく、ここに登録するまで自分の知らない世界だっただからである。
でもみんなが世の中から差別やいじめ、対立を無くし、愛が溢れる「愛の新世界」を目指していることがひしひしと伝わってきた。
このサロンに登録している人達は、心から今の社会を憂えている人間が集まっているせいか、舞の唱える新世界に向けての熱量がすごい。
自分と考えの近い人達の集合体。
自分もこの輪の中に加わって溜まった心の澱を吐き出したい願望に駆られた。
だが、メンバー同士が交流するには有料会員にならなければならない。
このサロンの有料会員にもランクがあるらしく、一番安いもので月額1000円。
それくらいの金額なら、もしサロンが自分の思っていたものと違い損をしたとしても諦めがつくと思い、有料会員に登録することにした。
メンバーと交流するときの名前はハンドルネームでいいらしい。
寿司職人に因み銀シャリにしようと思ったが、そのままでは面白くないので銀よりも優れたものをと言うことで「金シャリ」にすることにした。
「はじめまして」と挨拶を打ち込み、他のサロンメンバーとの会話に参加する。
「ようこそ、金シャリさん」
「こちらこそはじめまして! 仲良くしましょうね」
「愛の同志よ!」
皆、温かく迎えてくれる。
登録前は受け入れてもらえるか不安もあったが杞憂だったようだ。
ここなら自分の悩みを隠すことなく打ち明けていい場所だと、翔也はなんとなく確信した。
「実は俺の仲間が客から差別を受けて辛い思いをしたんです。それでこのサロンの人ならわかってもらえるかなって登録しました」
「そうなんですか。金シャリさん、仲間思いで優しい人ですね」
「マザー舞をはじめ、ここの人ならみんな理解をしてくれるよ!」
「よかったら、どんな話か聞かせてくれる?」
メンバーにそう言われたので、翔也はダニエルが客から差別的な発言を受けた出来事を話すことにした。
「それは酷い話だね」
「そういう客がいるから世の中の悲しむ人が後を立たない」
「ほんと。早くマザー舞の指導のもとで愛の新世界を創世しないと」
皆、翔也に共感してくれた。
「その客、それは生きごみよ」
ハンドルネーム、ミカリンという人物が書き込んだ。
「生きごみってなんですか?」
翔也は尋ねた。
「この世界には人間と、人の形をした生きてるごみがいるの」
「生ゴミじゃないよw」
「マザー舞が発見したんだけどね。生きごみは虫ケラ以下の存在のくせして、人間を差別したりいじめたり傷つけたりする存在。社会に紛れ込んでいるの」
メンバーが挙って説明をしてくれる。
「生きごみなんて人がいるんですね」
翔也は返信する。
「だから、人じゃないってw」
「そいつらはね、悲しいかな人間じゃないから我々が愛の言葉で諭そうとしても理解できないのよ」
「んで、そんな連中を社会から排除するのもこのマザー舞やサロンメンバーの役目」
「金シャリさんもご縁があってこのサロンに出会ったのですから、ぜひ協力いただきたいです」
「力を貸して欲しい。マザー舞の目指す愛の新世界のためにも」
「メンバーが増えて心強いです!」
翔也は新参者の自分がメンバーに挙って必要とされていることに嬉しく思った。
「俺も協力させてもらいます!」
翔也がそう書き込むと、メンバーはより一層賛美のコメントを送ってくれた。
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