第11話.未知のバイト
結果は二人とも即採用だった。
このカフェのコンセプトは冒険者カフェ。
客はファンタジーの世界を冒険する勇者。
キャストは酒場で働くエルフという役どころである。
「ちょ、ちょっと! こ、このスカート短すぎない!?」
更衣室でカフェの制服を着た莉沙が真樹に言った。
「ここの制服、可愛いですわね」
真樹は緑色のミニスカートをヒラヒラさせ、笑顔で莉沙に言った。
「可愛いってわたしの柄じゃないし……、うぅ、マジか。スカート履くのなんて、高校の制服以来なんだけど」
莉沙は僅かに頬を赤らめる。
「よく似合ってますわよ、莉沙先輩」
「それにこのとんがった耳はなんなの? こんなの付けるなんて超恥ずいんだけど」
「エルフだからこの耳なんですわ。醜いゴブリンの方が良かったですか?」
「そのゴブリンとかエルフとか、わたしはそういうの知らないの!」
莉沙が焦ったように言った。
「じゃあこの耳を活かして、このまま莉沙川とこのまま真樹川を名乗るのはどうでしょう、ヴェッ!」
「……はぁ!? ますます言ってることわかんないよっ!」
莉沙は赤らめた顔の眉間に皺を寄せる。
「チッ、これだからプロレスラーを知らない最近のガキは……」
真樹は舌打ちをし、ボソッと呟いた。
「え、なんか言った?」
「いえ、何でも無いですわ。さあ、研修へ行きましょう!」
真樹は莉沙の背中を押し、二人で更衣室を出た。
◇ ◇ ◇
「『お帰りなさい、勇者様! 』ハイ、みんなでご一緒に!」
「「「お帰りなさい、勇者様!」」」
採用された他の女性達とともに、真樹と莉沙も店長の指導の通り、客を迎える挨拶を唱和する。
「お客様がお帰りの際は『どうぞご無事で!』」
「「「どうぞ、ご無事で!」」」
ここのエルフは冒険で傷ついた勇者を癒す役割を求められている為、客と一緒にゲームで遊ぶサービスもあるようだ。
「わたし、男子と交流なんて滅多にないから、できるかどうかわかんないよっ……」
莉沙は隣にいる真樹に耳打ちをする。
「何も考えず、一緒に楽しめば良いだけですわ」
カフェのメニュー表を店長から各々に渡された。
見ると、種類も多いうえに名称が特殊で、覚えるのも大変そうだ。
「ちょっとこれ何? 覚えられるかな……?」
莉沙が眉を曇らす。
「ほんと、変わったメニューですわね。スライムオムライス、竜骨からあげ、魔女の煮込みカレー、闇属性コーヒー、ドラゴンパフェ、さらに豪華なマッチョドラゴンパフェ……」
「名前からじゃ、どんなのかピンとこない」
今まで関わったことがない、全く未知の世界で働くことに困惑する莉沙。
しかし、やらないで逃亡と言う選択肢は、莉沙の性格上、あり得なかった。
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