第5話.自由の男と憤慨の女②
「終末、まだ起きてないみたいなんだけど?」
皮肉を込めて皇が訊く。
「私の仲間がことごとく失敗したのよ」
魅華が苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「へぇ、それはそれは。天帝に仕える
皇は笑った。
「口の聞き方に気をつけなさいよ、皇」
魅華の表情がますます険しくなった。
「ごめんごめん。でもちゃんと万が一の為に俺達を控えさせているんだから。これも天帝様の想定内ってことだね。ところであいつらは? ほらオレ以外の
皇は気になっていたことを訊く。
「死んだわ。神と悪魔が手を組んだせいでね」
「……えっ、マジで? そうなのか……。もう一度会いたかったな。それじゃ
「私も探してるんだけどね。行方がわからなくなったのよ。本当に役に立たないんだから」
魅華は腕を組み苛ついていた。
「へぇ、そうなんだ。それじゃあさ……、智奈、
「裏切ったわ」
「……え、裏切った?」
「そう。せっかく中間者にして新世界に残れる体にしてあげたのに、私達の指示に束縛されるのは嫌なんだって。いまは自分の手で自由な世界を創るとか言ってるみたいね。いずれ捕まえて酷い目に遭わせてやらなきゃ」
魅華が怒気を込めて話す。
皇は彼女の話に何度か頷くと「……そうなんだ。わかった、その役目、俺にやらせてもらえないかい?」と言った。
「あなたの役目は人間同士が対立するように煽ることでしょう。私が選んだ中間者として働いてもらうわよ。その為にエクソシストになりたいなんて子供じみた夢を、
魅華は皇を指さした。
「おっと、今の俺はエクソシストと言っても悪魔だけでなく神をも狩るからな。もちろん奇能をくれた魅華さんには感謝してるし、対立煽りもちゃんとやるさ。だからさ、智奈の件も任せてくれよ?」
皇は両手を合わせ魅華に頼んだ。
「……両立できるの? ちゃんとやりなさいよ?」
「オーケー、任せてくれ。ところで対立を煽るってどうするつもりだい? 何かしら指示をくれよ」
「……それが思いつかないのよ」
魅華は整った顔を歪ませ小声で言った。
「おいおい、世の中の対立なんて、ネット見りゃいくらでもあるじゃんか。それなら、ほら、これとかどうだい?」
皇はスマホを取り出し、ある動画を開いて魅華に手渡した。
「なにこれ?」
「なんか、そいつら神と悪魔の先導者みたいだぜ。その三人、連んで愛の世界を創るとかなんとか言ってる。神と悪魔も内部分裂起こしてるみたいだねぇ」
魅華はしばらく動画を眺めていた。
「これは……! 使えるわねぇ!」
彼女の目が見開く。
魅華は皇にスマホを返すと、毒々しい笑みを見せた。
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