第42話.悪魔の回答③
「ほう、貴方達はこの世界では不幸だと言うが、殺人遺伝子も弟の存在も嘘ではないですか。何を苦しむ必要があるのです?」
贄村も紗羽から視線を外さない。
「えっ、どうして知ってるの……」
紗羽は顔色を変え、相談内容が嘘だと知られていたことに焦っている様子だ。
「殺人遺伝子はな! 黒川さんが生まれつき酷い環境にいるオレ達をたとえてくれた作り話なんだよ! 殺人遺伝子を持って生まれただけで、お前達のような連中に疎まれ、社会で辛い思いをさせられるだろうが! それと同じでオレ達もクズ親から生まれたというだけで、辛い目にしか遭ってこなかったんだよ! オレも紗羽も、何度、親から生まれてこなかったら良かったのに、って言われたことか!」
「それで、現状を変えたいが為に
贄村は憲慈の方へと視線を向ける。
「そうさ。黒川さんはこんな酷い世界じゃなく、誰もが平等な新世界へ連れて行ってくれるんだ。そのためには、世の中が対立して争うエネルギーが必要なんだ。オレと紗羽が幸せになれるなら、こんな世界壊してやる!」
「……自分達兄妹の私利私欲の為に、社会に混乱と暴動をもたらしたのか」
「それの何が悪いんだよ! みんな誰しも自分が幸せになるために誰かを犠牲にしてるんだろ!? だいたいな、自分自身の頭で考えず、オレの言葉に踊らされる方が悪いんだ!」
「他人を踊らせるつもりが、自分達が黒川に踊らされてるのではないのかね。奴は天帝の手先。この世界を消滅させることだけが目的で、お前達兄妹を新世界へ連れていくつもりなどないぞ」
贄村の言葉を聞き、憲慈の表情が固まる。
彼は慌てて後ろを振り返り、執事の黒川を見た。
黒川は動揺する様子もなく、不敵な笑みを浮かべている。
「憲慈、紗羽よ。奴は悪魔だ。言葉巧みに人を惑わせる。それにこの世界が不平等なのは事実だろう? 今更、後戻りはできない。この世界を消すしか選択肢はないのだよ。さあ、悪魔を倒し、終末を起こすのだ!」
黒川の指令に、憲慈と紗羽は頷いた。
紗羽は憲慈の元へと歩み寄る。
二人は背中合わせになり、互いの腕を組んだ。
「終末の邪魔をする悪魔は、ここで消えてもらいます!」
紗羽が力強く言った。
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