第40話.悪魔の回答①

 サバト人生相談所所長、贄村囚にえむらしゅうは殺人遺伝子の件で相談を受けていた毒水紗羽ぶすみずさわの邸宅へ、再び訪れた。


「贄村様、再びこんな山奥までお越し頂き、ありがとうございます」


 紗羽はお辞儀をし、応接間へ贄村を迎え入れる。


「いえ、こちらこそご依頼いただいた件の回答をお待たせしてしまい申し訳ありません」


 贄村も頭を下げた。


「どーもすみませんですわ」


 助手の夢城真樹ゆめしろまきも頭を下げる。


「さあ、どうぞお掛けください」


 紗羽に促され、贄村と真樹はソファーに腰を下ろした。


「さて早速、ご相談の答えですが」


 贄村は席に着くなり用件を切り出す。


「考えてくださったのですね。ありがとうございます。ただお答えを聞くのが怖い気もしますが……」


「弟さんは、お父様が発見した殺人遺伝子という、いずれ人を殺めてしまう可能性がある遺伝子を持っていると、そう言うお話でしたね」


「ええ、そうです」


「もし弟さんを自由にさせたならば世間の誰かを不幸にする、だが屋敷に閉じ込めておけば愛する弟に辛い思いをさせる。このジレンマをどうすればよいか……」


「そうなんです。ほんとうに胸を痛めております。どうか良い解決策を……」


 贄村はソファーから腰を上げ、窓際まで歩いた。


 窓の外では、鳥が囀り、枝から枝へと自由に羽ばたいていた。


 贄村は僅かな間、外の景色を眺めた後、振り向いて紗羽へ鋭い視線を送る。


 紗羽は少し怯えたような面持ちをしていた。


 目も泳いでいる。


 そんな紗羽に贄村は言った。


「弟さんを……、世の中に出しては行けません」





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