第29話.刺激不足の初デート②
メッセージの差出人は
喋る
SNSをタップして、舞からのメッセージを見た。
『りささん、約束破ったんですか?』
これがメッセージの内容。
莉沙は眉間に皺を寄せる。
(わたしが、約束を破った……?)
莉沙はこれが何を意味しているのかわからず、心当たりがない。
『なんのこと?』
素早く返事をする。
すぐに舞から答えが戻ってきた。
『ニュースをみてください』
舞が伝えてきた。
「……ねえ、今日なんかあった?」
喋る真壁の話を遮るように訊く。
「えっ、俺? 何かってあったって、一緒に映画観たじゃない」
「いや、そういうことじゃなくて……、何か世の中でニュースになるような出来事」
「さあ、俺、ニュースあんまり観ないんで。ほら、メディア、マスコミって嘘ばかりでしょ? だから信用できないし。ダラQの配信で観てるだけで真理がわかるから十分だよ」
真壁は頼りにならなさそうなので、莉沙は自分でスマホでニュースをチェックしてみることにした。
政治のニュースや芸能人の結婚の話題がトップにきている。
これらが自分に関係あるとは思えない。
莉沙は真壁とデートしていることを忘れて、ヘッドラインの記事、ひとつひとつに集中していた。
舞の言っていることが不明な為、嫌な汗を手のひらに滲ませながら、スマホをタップする。
すると記事の中に、ローカルニュースとしてひとつ気になるものがあった。
【20代男性三人、戻らず行方不明に】
記事によると、彼ら三人と全く連絡が取れなくなったことを心配した友人が通報したそうだ。
そして通行人による最後の目撃情報が、莉沙がいつもトレーニングをしている哲の森公園のあたりで騒いでいた姿らしい。
(もしかして、わたしが
莉沙は素早く文字を入力する。
『行方不明のニュースのこと?』
舞にメッセージを送った。
それからの莉沙は、舞からの返事が気がかりで上の空だった。
もともと乗り気でなかったデートに、懸念する出来事が加わり、悶々とした時間を過ごす。
チラチラとスマホの画面を見ながら、舞からの返事を待った。
その間、目の前の真壁が何を話しているのか、ほとんど頭に入ってこない。
だが、一向に舞からの返事は無かった。
「……ごめん。今日、用事があるのを思い出した」
莉沙は突然、真壁に謝った。
「え?」
真壁はいつもの引きつった笑顔を見せながら、困惑している様子だった。
「また今度、遊ぼ。今日はありがとう」
そう告げて莉沙は席を立つ。
結局、今日のデートは、これで終えることにした。
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