第28話.刺激不足の初デート①
男友達と二人きりで遊ぶなど、
先日、つい魔が差して、知り合ったばかりのコンビニ店員、
その後、真壁から映画を観に行こうと誘いがあったのだ。
莉沙は特に映画鑑賞が好きというわけではないが、自分に告白してきた真壁に対して、自ら友達ならいいと言ってしまった以上、義理を果たそうと思った。
とは言え、過去に男子とデートなどしたことないので、どのような服を着て行けばいいのかわからない。
(いつもどおりでいっか……)
そう思って、ふだん学校へ行く時と変わらない、オリーブドラブのカーゴパンツとグレーのパーカーという服装で出かけていった。
それでも気になるので、待ち合わせ場所で会った真壁に訊いてみる。
「……この格好、ダサい?」
「ううん、可愛いと思うよ」
真壁はいつもの引き
可愛くはないだろうと、莉沙は見え透いたお世辞に少し
「じゃあ、行こう」
真壁が言う。
「あ、うん……」
莉沙と真壁、二人並んで歩き、映画館へと向かった。
「観る映画は俺が決めといてあげたよ」
映画館前で真壁が指さしたのは恋愛映画のポスター。
「女の子はこういう映画、好きだろうと思って」
「そう。ありがとう」
真壁に礼を言う。
だが、莉沙は恋愛に興味がないし、また恋愛映画が観たいというわけではないので、一方的に好きだと決められたのはおもしろくなかった。
だが、否定すると映画を選んでくれた真壁に悪い気がする。
(ま、いっか……)
莉沙はチケット代を真壁に渡し、二人分買ってきてもらった。
映画は莉沙の思った通り、興味のない内容で退屈だった。
途中、何度も睡魔に襲われる。
莉沙にとって長い時間。
退屈と睡魔に耐えながら館内で空虚な時間をやり過ごすと、真壁と二人で映画館を出た。
「あのヒロインの子は元アイドルで、集客目的で抜擢された子だから、やっぱり演技が底辺ランクだね。ちゃんとした女優を使わないと。それに凝ったストーリーにしようして、内容捻りすぎ。大衆にウケるためにはもっと王道に寄せなきゃ」
真壁は莉沙に映画の感想を饒舌に語る。
「へぇ、あの子、アイドルだったんだ」
興味のない話でありながらも、莉沙は会話に付き合う。
真壁が喋り、莉沙が相槌を打つを繰り返しながら、とりあえずお茶を飲んでくつろごうと、二人でカフェへ向かった。
以前、
今日は男子と一緒だ。
ただ目の前に座るその男は、自分の好みの男ではないと、彼との時間を過ごす中で、莉沙自身はっきりと気づいた。
一緒に居て、莉沙の心に刺さるものがないのだ。
(わたしって、男なんか誰でも同じと思ってたけど、やっぱり好きなタイプってあったんだ……)
自分の意外な一面に気づけたことはあったが、真壁とのデートでは、パルクールをやっているときのような興奮や快感が全く得られそうにない。
(でも、自分から友達ならいいよって言っちゃったわけだし……)
約束した以上、つまらないからと途中で帰るのはさすがに相手に悪いと思い、真壁が熱心に語る動画配信者の話を聞いていた。
「でさ、そのダラQのおかげで俺、自分が肯定された気がして自信がついたんだよね。あの人は世の中の嘘を見破って、真理しか言わないから勉強になるよ。ちなみに莉沙さんはワォチューバー、誰が好き?」
「……え? いや、わたし、あまりそういうの観ない人だから……」
とりあえず自分との会話で真壁が楽しんでいるのならそれでいいかと思い、アイスコーヒーのストローに口をつけた時、莉沙のスマートフォンから、SNSにメッセージが届いたことを知らせる音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます