第26話.公園の夜①
「それじゃ今宵も集まってくれた自由を愛する旅人たちへ。明日も先の見えない時間の旅を、型にはまらず気ままに生きて。おやすみなさい」
ちなふきんはリスナーに別れの挨拶して、夜の配信を終えた。
配信用のタブレットを傍に置き、今度はスマホを取り出す。
連絡先をタップし、電話をかけた。
相手はすぐには出ず、暫く呼び出し音が鳴る。
「忙しいの?」
ちなふきんさんは相手が電話に出ると同時に言った。
「あのさ、
ちなふきんは
「受けてくれるかい? ありがとう。悪いけどお願いするよ。なにかわかり次第、あーしに連絡して。それじゃ、いい時間の旅を。おやすみなさい」
相手の男に別れを告げ、電話を切った。
ちなふきんはぐーっと両腕を高く上げて体をほぐすと、就寝前の読書に耽ろうと本へ手を伸ばした。
だが、今夜は昨夜と違い、テント外が騒がしい。
どうも公園で若い男達が騒いでいるようだ。
「なんかここ、テント建ってるし!」
野太い大声が聞こえる。
「ホームレスが暮らしてんじゃね?」
続けて、笑いを交えた高い男の声が聞こえた。
「オマエ、のぞいてみろよ!」
今度は幼い印象の声が耳に届く。
面倒なことになりそうな予感がしたので、機先を制するように、ちなふきんは自ら外へ顔を出した。
「うぉっ!」
騒いでいた男達三人は、ちなふきんの顔を見て驚きの声をあげる。
「マジ!? 女子のホームレス?」
高い声の男が目を丸くして言う。
「あれ? こいつ、ちなふきんじゃね?」
野太い声の男が言った。
「マジ? 真似してる奴じゃね?」
「ねぇねぇ、おねえさん、本物のちなふきん?」
幼い声の男が訊く。
ちなふきんはゆっくり頷くと、ピュイと吹き戻しを吹いた。
「やっぱ本物だぜ!?」
「おー、マジ!? 生で見れた!」
男達は、奇声を上げてはしゃいでいる。
「ねぇねぇ、ちょっと俺も配信に出してよ?」
「てか、テント中に入れて?」
男達はヘラヘラ笑いながら訊いてきた。
「ダメ」
ちなふきんは即答した。
「えー、マジ? ちょっとだけ。どんな暮らししてんのか、見るだけ」
野太い声の男がテントに強引に入ろうとする。
「不法侵入」
ちなふきんは男の手を払い除けた。
それでも男は、広い肩をテントの中へとねじ込もうとしてくる。
「ってか、こうして間近で見ると可愛いよな。ちなふきんって。俺、ショートカットの子、好みなんだけど」
高い声の男がニヤつきながら言った。
「俺、こいつとヤりたい」
続けて、幼い声の男がちなふきんを指さした。
「……前みたく、ヤる?」
野太い声の男が二人に呼びかける。
三人は顔を見合わせ、合図を送り合うように互いに頷いた。
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