第97話.終末を止めた世界③
あれだけ神と悪魔に分かれ
そんな贄村の背後から、コツコツと誰かが近づく足音が聞こえる。
贄村は振り返ることはなかった。
「結局、我々が終末を阻止することになるとはな」
男は立ち止まり、贄村に声をかける。
聞き覚えのあるその声の主は、
「人間の幸せを思い、互いに理想の新世界を創世しようと
天園がフッと笑う。
贄村は彼の言葉には応えず、暮れゆく街の様子を眺め続けていた。
天園は話を続ける。
「だが私は思う。この世は光があれば闇があり、裏があれば表があるように、それぞれが対になり世界のバランスを保っているのは、その方が人間の為になるからではないかと。そのおかげで今まで人類は繁栄してきたのではないかと。なので、どうだろう、情と理、それぞれを司る我々も、互いに手を取り組めば、人類にとって一層……」
天園は贄村に伝えた。
「……天帝がこの宇宙を創ったのならば、奴は初めに万物の元となる物質と、そして対となる反物質なるものを同じ数だけ創造した」
贄村は街を眺めたまま口を開いた。
「だが、この世界から反物質は消え、物質で溢れる世界となった。そして世界が物質に溢れたお陰で人類は発展した。つまりどちらかに偏ったとしても、世界を成り立たせることが可能ということ。世界と人間達が理で満たされた、私が理想とする私の新世界を創造する。貴様と組む気はない……」
贄村は冷たく突き放した。
「相変わらずだな、お前は……」
天園は手を広げ、肩を
「だが理と情、どちらに偏ろうとも、私も貴様も、人類の幸福を願っている点は同じだ……」
贄村は天園に伝えた。
夕闇が二人の頭上の空をじわじわと染めてゆく。
贄村と天園は並んで
-終末を望む者編・完ー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます