第82話.終末の正体⑥

 鬼童院戒きどういんかいに学園祭実行委員会室へ行くように言われ、夢城真樹ゆめしろまきは彼と共にB棟へと駆け足で向かった。


 人気のない廊下に二人の足音が反響する。


「あの、みんなあたしの為に戦ってるんですけど、ほっといていいのかしら?」


「気にするな。今から真の敵と戦うことになるかもしれないんだからよ」


「鬼童院さんの言ってることがさっぱりわからないわね」


 B棟内を急いでいると、階段のところに一人の女子が蹲るようにして座っていた。


「あら!? 舞ちゃんじゃない!」


 真樹は急ブレーキをかけるように足を止める。


 真樹の呼びかけに応じて、彼女が顔を上げた。

 その目は泣いていたようで、赤く腫れている。


「誰だ? この女」


 鬼童院が真樹に訊いた。


天象舞てんしょうまいちゃん。鬼童院さんと同じ先導者の人よ」


「ああ、贄村にえむらのダンナから名前だけは聞いたことがあるぜ。この子がそうか」


「それにしてもどうしてこんなとこにいるの? なんで泣いてるの?」


 真樹が首を傾げながら舞に尋ねる。


「わたし……、わたし……」


 舞は嗚咽を繰り返すだけだった。


「まあいい。お前も着いてこい。俺達、全員に関わることだ」


 鬼童院がそう言うと、「そうね、一緒に行くわよ」と真樹がしゃがんでいる舞の腕を取り彼女を引っ張って、強引に立たせた。


 そして彼等は三人で、学園祭実行委員会室へと向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る