第81話.終末の正体⑤
荒ぶる聖音の支持者の群衆の中をかき分け、
「聖音お姉さま!」
野外ステージの上で指揮を取る聖音に小咲芽は下から呼びかけた。
「あっ、小咲芽ちゃん! 来てくれたんや! これで百人力やで。新世界創世に向けて一気に攻め立てるで!」
聖音が小咲芽にガッツポーズを見せた。
「お姉さま、すぐにこの争いを止めてください!」
「えっ、なんやて!?」
聖音が怪訝そうな表情を見せる。
「違うんです! これは罠なんです! たとえ勝っても新世界なんて無いんです!」
戸惑う聖音に、小咲芽は周囲の喚声に負けないよう、可愛らしい声を精一杯張り上げて訴えた。
◇
一方、悪魔側の支持者陣営では、
道中、彼がふと目をやると、キャンパス内に植えてある大木の陰で二人の女子が震えていた。
「ねぇ
深窓の佳人風の女子が震えた声で言う。
「やっぱりまきちゃんが
もう一人も怯えた表情で言った。
二人は抱き合って「うぇーん、怖いよー!」と嘆いていた。
この期に及んで、無様な二人だと思いながらも、真樹のいる場所を目指す。
真樹も聖音と同じく、学園祭用に設営された野外ステージの上で指揮を取っていた。
「おーい、真樹の嬢ちゃんよ!」
鬼童院は呼びかける。
「おぉ、鬼童院さん、来てくれたのね! さあ、一気に神の連中を滅ぼして新世界を創世するわよ!」
真樹はピースサインを見せる。
「違うんだ、嬢ちゃん! いますぐこの争いを止めろ!」
「え?」
「今すぐ止めるんだ!」
「本気なの?」
真樹は怪訝そうな表情を見せる。
「本気だ本気! こりゃ天帝って連中の罠なんだ!」
鬼童院が真樹に真相を伝えようとする。
「命賭けたの命を! 勝負よ、この場は」
真樹が鬼童院に怒気を込めた声で言った。
「はぁ? ……言ってる意味がわからんが、いつまで続けても無駄だ、これを!」
「だったらぶち破りなさいよ! なんであたしにやらせるのよ」
「だから、止めにきたんじゃねぇか。さっきから何言ってるのかわからんぞ!」
「悪魔も先導者もないわよ。遠慮されたら困るわよ。なんで遠慮するのよ。力でやんなさいよ、力で」
「遠慮なんかしてねーけど、そう言うなら力ずくで止めてやる!」
鬼童院はステージを上がろうとした。
「待って待って! 待って!」
真樹が慌てて制止する。
「嬢ちゃんとは会話が噛み合わん! とにかく、争いを止めてすぐに学園祭実行委員会室へ行くんだ。そこへ行きゃ全てわかる!」
鬼童院は周囲の喚声に負けないよう大声で言った。
「学園祭実行委員会室へ行けばいいのね。オッケー。あたしは何も言わないわよ、もう! 一緒に行くのよ、その代わり!」
真樹は鬼童院を力強い視線で見ていた。
伝えたいことは伝えたものの、鬼童院は以前からこの子、いや、この小悪魔は変な奴だと思っていたがやっぱり変な奴だと、気疲れが出て脱力した。
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