第76話.聖戦前の集会
知らなかった天帝の存在、そしてその天帝の使者だという
これらの事実に面食らった
聖戦を目前に、それぞれの陣営は集会を開いていた。
「心の清いみんな! うちを支えてくれてありがとう! 今日で無情な世界、他人から傷つけられる辛い毎日も終わりです。後は、思いやりのない悪魔の連中とその支持者を、うちらの正義の心で倒すだけです。みんなで力を合わせて、終末で冷血漢どもを倒し、情に溢れる優しい新世界を創ろうやありませんか!」
聖音が支持者を前に、力一杯マイクで呼びかけた。
「聖音ラブ! 聖音ラブ!」
支持者から大きなコールが起きた。
聖音は支持者に向けて投げキッスをする。
これから始まる夢城真樹との戦いに、聖音も支持者の声により自らを鼓舞した。
◇
一方、夢城真樹側も、支持者を集めて集会を開いていた。
この集会に不思議研究会の
支持者の一人である男子学生がマイクを持つ。
「よく聞け! 我々の上には悪魔がいる! ミス真樹!」
学生が叫んだ。
集まった支持者達から、自然発生的に「マーキ、ボンバイェ! マーキ、ボンバイェ!」とコールが起きた。
そのコールに迎えられ、真樹が支持者の前へ颯爽と登場した。
「元気ですかーっ!」
真樹がマイクを手に取り、支持者に向けて叫ぶ。
聴衆から歓声が上がった。
「あたしは怒っている、今日は。あなたも怒ってるの!?」
真樹は支持者の男子学生の一人にマイクを向けた。
「怒ってますよ!」
男子学生は興奮しながら答えた。
「誰によ!」
真樹が訊く。
「理の新世界を妨げようとする福地聖音にです!」
「そう。まあ、あなたはそれでいいわ」
真樹はあっさりあしらった。
「あなたは!?」
今度は別の女子学生にマイクを向ける。
「わたしは……、このままでは自分の明るい未来が見えません!」
女子学生が苦しい胸の内を叫ぶ。
「見つけなさい、自分で!」
更に真樹は、別の男子学生にマイクを向けた。
「俺は、新世界で二度目の人生をやります!」
男性学生は力一杯叫んだ。
「……まあ、新世界にはそれぞれの思いがあるから、それはさておいて」
真樹が緊張感なくそう締めると、聖戦を前に気が張り詰めている聴衆から、脱力するような笑い声がどっと起きた。
「じゃあなんで聞いたのよ、もう」
聴衆と一緒にケラケラ笑う富樫笑実の隣で、最上部長は頭を抱えた。
「いよいよ終末よ! ここにいるみんなで力を合わせて、理に従う選ばれし者だけの新世界を創世するわよ! 倒せ、神の偽善者どもを!」
真樹がマイクで叫ぶと、再び支持者達から興奮の
それぞれの集会が終わり、いよいよ終末の火蓋が切られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます