第77話.終末の正体①

 贄村囚にえむらしゅう明導めいどう大学へとやってきた。


 大学周辺では興奮した人々の雄叫び、絶叫、そして怒号や悲鳴など、それらが入り交じった声が、世界を振動させるほど響動どよめいていた。


 贄村は大学へ来る前に、敵対する天園司あまぞのつかさのサクラメント人生相談所へ寄った。


 室内はもぬけの殻だった。


 恐らく天園も明導大学の謎に気付き、すでにこちらへ向かったのだろう。

 そう悟った。


 大学周辺またはキャンパス内では、それぞれの支持者が叫び声を上げて、暴力でぶつかり合い、戦っていた。


 男も女も老いも若きも、集まった人間同士が争う中を、贄村は淡々と進む。


 負けて倒れた人間は、雪が溶けるようにその存在を消していた。


(先導者でも無い者が粛清を……?)


 そんな光景をいくつも目にしながら、贄村はB棟の前までやってきた。


 躊躇することなく、独り中へ入る。


 皆が抗争に参加しているせいか、B棟にいる人間はまばらだった。


 贄村は目的の部屋まで歩みを速める。


 目指すは学園祭実行委員会。


 部屋の扉には「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙がしてあった。


 贄村は勢いよく扉を開く。


 室内では、一人の男が椅子に座ってパソコンを眺めていた。


 パソコンにはいま、キャンパス内で起こっている抗争が、リアルタイムで映されているようだった。


「困りますねぇ。ここは関係者以外、立ち入り禁止ですよ」


 男は贄村の方へ振り向かず、パソコンへ目をやったまま言う。


「……貴様達にとって、私は関係者のはずだが?」


 贄村が声をかけると、回転椅子に座ったまま男がゆっくりと振り向く。

 銀縁の眼鏡がきらりと光った。


「貴様、一体何者だ? ……正岡まさおか


 贄村の問いかけに男はニヤリと笑った。

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