第75話.終末の宣言
だが、一般的なミスコンのように自己をアピールするのではなく、専らそれぞれの終末論について語るという異様なものであった。
「来る終末で、理屈ばかりの心の冷えた悪者を滅ぼし、情にあふれる人達だけで素晴らしい新世界を創りましょう!」
「来る終末で、感情に流され綺麗事ばかりの偽善者を滅ぼし、理に従う人達だけで素晴らしい新世界を創ろうではありませんか!」
会場は常に歓声と罵声が入り混じり、響いていた。
聖音の支持者と真樹の支持者が対立する講堂の中、最後にアピールするのは
アリアはスタンドマイクの前に立ち、騒々しい会場を見渡す。
「静かになさい!」
彼女は清楚な外見に似つかわしくない怒鳴り声をあげた。
意外な事態に驚いたのか、会場が静まる。
「会場にいる人、いえ会場の外にいる人も、よくお聞きなさい。今からわたしが話すことを。皆さんはわたしが何者かご存知ないことでしょう。貴方達は終末論を語るお二人に夢中のようですが、実はわたしこそ終末を齎す天帝に遣わされた使者なのです」
それを聞いた会場が戸惑うように騒めく。
「天帝とは、人間や神、悪魔どころか、この全宇宙の全てをお創りになられた存在。その使者であるわたしが皆さんに教示します。終末後の新世界はミスキャンパスの票数などで決めるものではありません。理と情、ふたつの力がぶつかり合い、戦って、より思いの強い者の世界が創世されるのです。わたしの言葉は天帝の意思。そのわたしが宣言します。今日が終末の日であることを!」
会場が大きく
「さあ、聖戦です! 己の信念を貫き、理の支持者も情の支持者も思い切り戦いなさい! 世界を変えるため、自らの力で相手を粛清するのです。天帝はその戦いを見守られていることでしょう。そして、勝者には新世界の祝福を!」
終末論を信じていた会場の者達は、今日が終末の日であり、聖戦に勝てばいよいよ新世界へ行けると、興奮と狂気が最高潮に達した。
「今日が……」
「終末……!」
舞台の袖にいた聖音と真樹の二人は、神や悪魔も創造した天帝の使者と名乗るアリアの登場と、彼女による終末の宣言に、目と口を大きく開け、唖然とした表情で佇んでいた。
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