第68話.混沌の学園祭④
自分が指定した時刻に、神の
自分はそれを見届け、先導者同士の衝突時に発生するエネルギー、それを収集する役目を課せられている。
本日、終末を引き起こす為に。
キャンパス内はA棟、B棟にて学園祭で盛り上がっているので、使われていないこのC棟には、まず誰もいない。
いるとしても、間違えて迷い込んだ者ぐらいだろうと菊美は思っていた。
実際、その通りだった。
だが、その間違えた人間が都合の悪い者だったようだ。
菊美が廊下を早足で歩いていると、前方から現れた二人組の女。
(えっ? あれは……)
一人は自分とそっくりな人物。
(……
菊美は慌てて引き返すか、どこかの部屋に隠れるかしようと思ったが、残念ながら夢城真樹とその連れの女も菊美の存在に気づいた後だった。
思わぬところで対面してしまった。
動きを止め、顔を見合わせる二人。
「えーっ!」
菊美を見て、夢城真樹と一緒にいる女が驚きの声を上げた。
「とっ、
真樹が目を丸くしながら、言葉を絞り出す。
「ああ……、なんというみすぼらしい顔だ。生まれてきたこと自体が可哀想だわ」
そう言って菊美に向け、真樹は合掌した。
「いや、まきちゃんそっくりなんだよ!」
富樫がツッコミを入れる。
夢城真樹と顔を合わせるという想定外の状況に混乱した菊美は「くっ……!」と嘆息を漏らし、二人の間を駆け足ですり抜けた。
その時「あ、逃げた」という真樹の声に加えて「あれっ、この人アイドルの……」と冨樫という女が話す声が聞こえた。
自分が誰か気づかれたようだ。
もしかしたら、この綻びが今後の計画に支障を与えるのではないか。
そう、菊美の頭を過った。
早く事をなさねばならない。
菊美は憂慮を抱きつつ、第二多目的室まで来ると、足を止め呼吸を整えた。
扉を僅かに開く。
中では緑門莉沙と砌百瀬が戦っているはずだ。
室内を覗くと、激しい戦いが繰り広げられてるかと思いきや、菊美の目に映ったのは、意外なことに、すでに床に
(あれ、戦い終わったの……?)
しばらく様子を窺っていたが、二人は微動だにしない。
菊美は恐る恐る室内へと足を踏み入れた。
倒れている二人の元へ近寄る。
(もしかして、相討ち……?)
どうやら戦いは痛み分けで終わったようだ。
(ま、早く決着がついたのなら、それでいいわ。次の戦いの場所に行かなきゃならないし)
菊美は先導者同士の力が衝突した時に発生する、終末に必要なエネルギーを収集しようと、自身の奇能を発動させようと思った。
その時である。
「しまった!」
菊美は思わず声を上げた。
この室内にエネルギーが満ちている気配が全く無い。
彼女がその事に気づいたのが僅かに遅かった。
「おいで、ストローマン」
俯せの莉沙が声を上げ、人差し指を立てる。
それと同時に、床から湧いてできた無数の藁が菊美の足に絡みつき、彼女はその場から動きが取れなくなった。
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