第66話.混沌の学園祭②

 ミス明導めいどうの開始時刻が近づくにつれ、キャンパス内が異様な盛り上がりを見せる頃、出場者である夢城真樹ゆめしろまきは、開始前の腹拵えと、不思議研究会の部室で昼食を取っていた。


 部室のパソコンでインターネットを見ながら、好物のエクレアを食べる。


「あっ、いた!」


 部室の扉が開く音と同時に、最上雪もがみゆき部長の大声が聞こえた。


「ちょっとこんなところで何やってんのよ、もう! そろそろ控え室に行かなきゃいけないのにまきちゃんがいないって、えみちゃんが探してたわよ」


 最上部長は眉を下げて困った顔を見せる。


「あら、もうそんな時間ですか」


 真樹は口をもぐもぐと動かしながら、目を丸くして答えた。


「えみちゃんにサポーター頼んだのまきちゃんでしょ……って、ちょっと、何見てんのよ! よくそんな酷い事故現場見ながらご飯食べれるわね」


 最上部長は真樹が閲覧しているパソコンの画面を見て、呆れと驚きの入り混じった声を出した。


「いやあ、ちょっとポ◯カキ◯トを観ていたら、時間が経つのも忘れてしまって」


 真樹は微笑みながら椅子から腰を上げる。


「もう、部室のパソコンで変なもの見ないでよ。ほら、行くわよ」


 呆れた声で最上部長は真樹の背中を押しながら、退室を促した。


 廊下に出ると、バタバタと富樫笑実とがしえみが小走りで二人の元へやってきた。


「部長、まきちゃんいた? ……って、いたんだぁ! よかった」


 富樫が胸を撫で下ろす。


「お待たせしてごめんなさい。それでは、ミスコンであたしの美しさを民衆に見せつけに行きましょうか。あたしのことは今日はマギィ夫人とお呼びなさい」


 真樹はポケットから扇子を取り出し、優雅に扇ぐ。


「はい、夫人」


 富樫は頭を下げた。


「ちょっとえみちゃんの方が先輩でしょ!」


 最上部長がつっこむ。


「あたしの控え室はどこかしら? 富樫先輩」


「えーっと、C棟の第二多目的室です。夫人」


「では参りましょうか」


 真樹は優雅に歩き出し、富樫と連れ立って多目的室へと向かう。


「部屋間違えちゃダメよ。二人とも頑張ってね」


 二人の背後から、最上部長の心配そうな声が廊下に響いた。






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